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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

「さくさく三択で学ぶ AI三間飛車の新定跡」ひとくちレビュー

本
目次

Kristallweizen(白ビール)を活用

「さくさく三択で学ぶ AI三間飛車の新定跡」のひとくちレビューをお送りします。

しめりけ (著) 発売日:2022/5/24

本書では、新定跡発見に将棋AIの「Kristallweizen」を活用していることを全面に押し出しています。

Kristallweizenは第29回世界コンピュータ将棋大会(WCSC29)で準優勝に輝いた将棋AIで、WCSC28ではHefeweizenの名で優勝するなど、実力は折り紙付きです。

タイトルの通り、三択の次の一手形式です。

著者はアマ強豪のしめりけさん。

過去に「あぴまる流将棋シリーズ 今日から捌ける三間飛車」5冊と、「あぴまる流将棋奇襲シリーズ①~今日から使える台パン戦法~①アヒル戦法②▲7七飛戦法」1冊の、計6冊ものKindle電子書籍をリリースしています(私はすべて購入して読みました)。

しめりけさんは、過去にTwitterにてこの「白ビール師匠」(Kristallweizenの愛称)の妙手・好手を多数紹介してきています。

高い棋力を持つうえ将棋AIに造詣が深く、かつ何冊もの電子書籍執筆経験のあるしめりけさんに、マイナビからAI三間飛車の執筆依頼が舞い込んだのは、ある意味自然な流れだったのかもしれません。

高い棋力がないと、ソフトが示す難解な指し回しを解釈して解説することは困難です。また、高い棋力がないと手順のすごさが十分理解できないので、良い局面、問題をピックアップすることも難しいでしょう。

本書の目次

本書の目次は以下の通り。

本書の目次

△6五歩急戦▲5六銀型
△6五歩急戦▲5四歩・▲6七金型
△6五歩急戦▲5四歩・▲6八金型
いきなり早仕掛け
斜め棒銀
準急戦
エルモ囲い急戦
持久戦に対する仕掛け
天守閣美濃
四枚美濃・米長玉
一直線銀冠
右四間飛車
居飛車穴熊 地下鉄飛車作戦
居飛車穴熊▲8八飛作戦
升田式石田流▲7七桂型
升田式石田流▲7七銀型
升田式石田流▲7七銀型の待機策
升田式石田流▲7七銀型・早囲い型
升田式石田流封じの△4二玉
石田流対策△1四歩作戦

コラムは無く、次の一手問題とその解説に全力投球しています。約400ページにもおよぶ大容量です。

目次の通り、急戦から持久戦まで、そしてノーマル三間飛車から石田流まで、非常に幅広い戦型を取り上げています。

手厚いバランス型の三間飛車

対急戦では比較的特徴が出にくく、ただただ強さに圧倒されたりもしますが、それでも対急戦の▲7九飛型(以下のしめりけさんのチラ見セ参照)など、随所に新たな構想を見せつけてくれています。

真骨頂は対持久戦でしょう。袖飛車、地下鉄飛車、向かい飛車振り直し、中住まい、強力な玉頭攻め等々の構想を披露しています。

とりわけ対右四間飛車での手厚い布陣はユニークです。三間飛車は右四間飛車の攻めを軽くいなして戦うのが流儀だったりもしますが、それとは真逆とも言える指し回しです。

多彩な指し回し

将棋AIは、三間飛車の長所を引き出してくれているようにも感じます。

向かい飛車振り直しや引き飛車からの地下鉄飛車構想は四間飛車からでも可能ですが、▲7五歩からの石田流、および▲6八角と引いて▲4六角と出たり2四の地点の玉頭攻めがスムーズにできるのは、三間飛車ならではです(四間飛車だと飛車が邪魔してすぐには▲6八角と引けない)。

また、左金を動かさずに(左金の形を決めずに)飛車を引けるのも三間飛車のメリットです。

将棋AIは、相手の陣形に合わせてこれらの戦術を見事に使い分けているように見えます。同時に、三間飛車の優秀さに気付かされました。

石田流の解説も充実

本書は石田流の解説も充実しています(なお、将棋俱楽部24に常駐しているHefeweizenも石田流を良く指します)。

升田式石田流の問題を解いていくことで、手詰まりにならずに局面を打開していく技術が身に付くでしょう。

また、4手目△4二玉に5手目▲7八飛と強く戦う変化(第1図)が13問も載っています。

【第1図は5手目▲7八飛まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=5 ▲7八飛まで

この「乱戦定跡」をここまで詳しく解説している棋書は他にないでしょう。角道を止めると右四間飛車エルモ囲いにされて困る、という方にはオススメの指し方です。私も愛用しています。

指し手の視野を広げたい方に

本書で解説されている将棋AIの指し回しは、これまで定跡になっていないことから、気付きにくくかつ激しくて難解なものが多いです。

しかし指し手を進めてみると意外にもバランスが取れていてこれでも戦える、ということに気付かされます。

本書を読むことで、先入観を無くして視野を広げ、指し手の候補手を増やして考えるクセが付くのではないでしょうか。バランス型のユニークな三間飛車を指したい方にもオススメです。

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