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インターネット発祥の先手石田流対策
「こなたシステム」(「K塚システム」とも呼ばれています)とは、3手目▲7五歩からの先手石田流に対し、角交換して直ちに筋違い角を放った後、向かい飛車にして飛車先突破を図る戦法です(第1図)。
先手が2七の地点を1枚で守っている場合(第1図は銀1枚で守っているケース)は角と飛車の2枚で攻めることができますし、2枚で守っている場合はさらに左金を繰り出していって棒金で攻めかかる(第2図)ことができます。
攻めの厚みを重視するなら、相手の布陣によらず棒金を目指すのも良いでしょう。
自玉は角が邪魔をして堅くしづらいこともあり、持久戦にはあまり向いておらず、囲いはほどほどに(または全く囲わずに)速攻を仕掛けていくのが基本戦略です。
名前の由来
ブログ「人生0手の読み」の二歩千金さんが、名前の由来をまとめた記事を公開しています。
追記:k塚さんからコメントいただきました
k塚さんご本人より、本記事にコメントをいただきました。下のほうまでスクロールすれば見られますが、ここにも抜粋して載せておきます。k塚さん、コメントありがとうございました。
コレ自分が2011年位に日大将棋部で作った戦法ですね。
k塚システムは本来、自分が作った振り飛車対抗策の総称でした(対ゴキゲン中飛車、対四間飛車、対石田流)。対石田流が一番派手かつ、決まれば勝ちがほぼ確定なんで後輩が色んな所で使いまくった結果、対石田流=k塚システムとして拡散したのが皆がコナタシステムと呼んでるものの発端です。
こなたシステムの組み方
こなたシステムの特徴を整理すると、以下の通りです。
筋違い角
初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩と先手が石田流を目指すのに対し、△8四歩と突きます(第3図)。
これに対し▲6六歩は△8五歩で石田流を阻止されてしまうので、▲7八飛が定跡です。
ここで△8八角成▲同銀△4五角(第4図)と筋違い角を放ちます。
△3三金型向かい飛車
△4五角に対しては▲7六角が習いある切り返しで、先手十分というが定跡ですが、ここで△4二金(第5図。△3二金でも可)が主眼の一手です。
以下、△6四歩と突いて角の逃げ道を作った後、△3三金から△2二飛と向かい飛車に構えます(第6図)。
3三にいるのが金であるのがポイントで、もし銀だったら▲4三角成とされてしまうところです。
また、さかのぼって4手目が△8四歩だった理由は、代わりに△4二玉や△6二銀だと向かい飛車に振れないからでした。
なお、3手目▲7五歩に対する他の有力な手段として4手目△1四歩(参考1図)がありますが、これに対し石田流側が5手目▲7八飛とした場合、同様に△8八角成~△4五角と進めて△3三金型向かい飛車に組むことができます(参考2図)。
△8四歩が、攻め味の勝る△1四歩に変わっているいる計算なので、さらに優秀な形と言えるかもしれません。
この形は厳密にはこなたシステムとは呼ばれておらず、類似系のひとつです。「振り飛車最前線 石田流VS△1四歩型」(村田顕弘六段 著)でほんの少しだけ解説されています(この変化の解説目当てで購入するとがっかりすることになるので気を付けてください)。
ただし前述の通り4手目△1四歩に対し5手目▲7八飛と強く戦ってきた場合に狙える形なので、確実にこなたシステムを指したいのであれば4手目△8四歩とするのが正解です。
棒金
さて第6図に戻って、以下囲いに手数をかけても角が邪魔をしてあまり玉が堅くならないので、△2四歩~△2五歩と飛車先の歩突きを急ぎます(再掲載第1図)。
第1図以下、先手が▲2八玉としなければ△2六歩▲同歩△同飛からいきなり飛車先突破を狙う手があっていい勝負です(以下▲2七歩には△同角成▲同銀△同飛成)。
先手としても怖いところなので、▲2八玉と2七の地点の利きを増やして受けるのが自然。
そこで今度は△4二銀として4三の地点を受けたあと、△4四金~△3五金(再掲載第2図)とスムーズに棒金を狙えるのがこなたシステムの優れている点です。
第2図となってはもはや棒金の進撃待ったなしです。
こなたシステム対策
先手石田流対策としてこなたシステムを解説しているサイトは多いのですが、こなたシステム対策を解説しているサイトはごくわずかです。こなたシステム自体がマイナーだからでしょう。
とはいえ石田流党としては実際に指されると困るものです。将棋ソフトの力も借りながら、実戦的な対策を独自に考えてみましたので、紹介しておきます。
左銀の活用はいったん見送る
まず第7図。
▲3八銀のところは▲2八銀や▲3八金もありますが、妥協せず▲3八銀としておきたいところ。▲3八銀とした場合、第7図までは必然です。
ここで▲4六歩と突いておきます。このタイミングで突けば、角の引き場所を6三に限定できます(第8図。7二だと飛車を振れない)。
このあと、現状左銀がそっぽであるため▲7七銀と上がるのが自然です。すると飛車先が非常に重くなるので、飛車を8八か6八に振り直して活用するのが棋理に沿う流れになります。実際、対居飛車の変化ではそれらの構想で振り飛車十分とされています。
しかし、こなたシステム相手にはなにより速攻が大切です。▲7七銀は飛車の振り直しとセットになるため手が遅れる要因となります。
先手石田流VS棒金で、8八の銀を相手の棒金と見合いにしてある意味「見捨てる」定跡がありますが、それと同種と考えると良いのではないかと思います。第8図における8八の銀と見合いと言える後手の効率の悪さは、3三の金と、玉の囲いにくさです。
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石田流の基礎知識 棒金とは
棒金戦法とは、主に石田流三間飛車対策で用いられる、金銀による押さえ込み作戦です。数ある振り飛車戦法の中で石田流は、浮き飛車にして金銀よりも前線に飛車を配置する、特殊な作戦です。ならばその飛車を狙って金銀を盛り上げて押さえ込んでしまおう、というのが棒金の狙いとなります。
角頭をいじめる
代わりに急ぐべきなのが、6筋の歩交換ならびに後手の角頭いじめです。第8図以下、▲6六歩△2二飛▲6五歩△同歩▲同角(第9図)と直ちに6筋から仕掛けていきます。
▲6五同角が▲8三角成の先手になっているのがポイントです。
以下△7二角には▲7四歩、△7二銀には▲6八飛と回って十分(+400点程度)。▲6四歩と拠点を作る展開は実戦的で勝ちやすいのではないでしょうか。
Hefeweizenの実戦例 2筋の受け方
先手が速攻を仕掛ける対策を紹介しましたが、▲7七銀から飛車を回る展開でも戦えます。
その戦い方を行なったHefeweizenの実戦例を、参考にひとつ紹介しておきます。
▲3九玉でなく▲3九金から▲2八歩と低く受ける戦い方を知っておくと、戦術の幅が広がるのではないでしょうか。
なおこの場合、△2六同飛~△4六飛と回られた手が王手になるので、▲4六歩はしばらく突かないほうが良さそうです。
飛車・角・金の連動が美しいこなたシステム
先手石田流に対し、筋違い角からの金の進出、向かい飛車への転換、そして棒金へのスムーズな連動が美しいこなたシステム。
▲7六角と打たされた形は意外と窮屈です。石田流党は自分なりのこなたシステム対策を持っておいた方が良いでしょう。
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コメント
コメント一覧 (2件)
コレ自分が2011年位に日大将棋部で作った戦法ですね。
k塚システムは本来、自分が作った振り飛車対抗策の総称でした(対ゴキゲン中飛車、対四間飛車、対石田流)。対石田流が一番派手かつ、決まれば勝ちがほぼ確定なんで後輩が色んな所で使いまくった結果、対石田流=k塚システムとして拡散したのが皆がコナタシステムと呼んでるものの発端です。
しばらく将棋辞めてて研究途中の戦法でしたがネットで色々対抗策考えられてるんですね。かなり楽しみつつ読んでます(*´ω`*)
最近になってぼちぼち将棋再開したんですが、新な変化が唐突に浮かんでただいま改良中です(*´ω`*)
k塚システムをまだ楽しみたいですからね(笑)
k塚さん(通称を使わせていただきます。あしからず)
ご本人からコメントいただき、ありがとうございます。
振り飛車対抗策の総称だったんですね。石田流側から見て、エルモ囲い右四間飛車と並ぶ嫌な、もとい優秀な戦法のひとつだと感じています。
またユニークな戦法が生まれるのを楽しみにしています。