羽生善治九段、5局目で藤井二冠に勝利
2020年9月22日に行われた第70期王将戦挑戦者決定リーグの開幕局で、羽生善治九段が藤井聡太二冠に勝利しました。
羽生九段は、対藤井二冠戦で5局目にして初勝利をあげました。個人的には、もう5局も対戦しているのかという印象です。
初戦は2018年2月17日に行われた第11回朝日オープン戦準決勝。本局に勝利した藤井五段(当時)が、決勝でも広瀬章人八段に勝利し優勝したのは記憶に新しいところです。
この他、5局中3局は王将戦挑戦者決定リーグと王位戦挑戦者決定リーグ。挑戦者決定リーグで対局数が増えていくのが強者同士の宿命です。
そして残る1局が、このあと取り上げる第28期銀河戦本戦トーナメントCブロックでの対局です。棋譜は、銀河戦のWebサイトで無料で観ることができます。
羽生九段のノーマル三間飛車
2020年7月4日に対局が行われ、2020年9月29日に囲碁・将棋チャンネルにて放送された本局では、後手番となった羽生九段が意表のノーマル三間飛車を採用しました。
シンプルに考えれば、主力とする矢倉や角換わりなどの研究ストックを他棋戦の舞台のために温存した、となりますが、では代わりにどの戦術を採用するかというのがテーマとなった本局にて、ノーマル三間飛車を採用したのが興味深いところです。
今から約20年前、四間飛車藤井システムが猛威を振るっていたころ、羽生九段が藤井システム対策の気付きを得るべく居飛車党相手に自ら藤井システムを多数採用していたのは有名な話。勝率が非常に高かったというおまけ付きです。
翻って現在、羽生九段は最新の三間飛車の優秀性を感じており、相手に対策を問うべく自ら採用してみた、という動機があったのではないかと推測します。
左美濃VS石田流組み換え
さて本譜は、藤井聡太二冠の居飛車左美濃に対して羽生九段がノーマル三間飛車△4三銀型から3筋歩交換を図って対抗しました。
先日発売された将棋世界2020年11月号の三間飛車特集で取り上げられた最新形に近い形と言えるでしょう。
小駒の成り駒だけでせまる両対局者
中盤戦以降は、藤井二冠の抑え込みに対し、羽生九段が敵陣に作った小駒の成り駒だけでどう左美濃にせまるか、というのがテーマに。
終盤戦、藤井二冠が羽生九段の攻め駒不足を見切り、自らも二枚のと金でひたひたと羽生九段の玉にせまっていったのが面白い展開でした。
最終盤、羽生九段は藤井二冠の左美濃の金銀をはがし切ったもののそこから詰みはなく、自玉は受けなしのため投了となりました。
藤井二冠、決勝トーナメント進出
本局に勝利した藤井二冠は、最多勝ち抜きとCブロック優勝の両面で文句なしの決勝トーナメント進出を決めました。
間違いなく優勝候補筆頭でしょう。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.91 / 振電改
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