Hefeweizenの耀龍三間飛車
将棋AIが示してくれる、三間飛車の新たな可能性。
先日1つ目として、「三間飛車ミレニアム」を紹介しました。
そしてもう1つは、今回紹介する「耀龍四間飛車」ならぬ「耀龍三間飛車」です(後述の通り、これは造語です)。
こちらもsuimonさんのツイートをきっかけに知ることができました。ありがとうございます。
耀流四間飛車だけでなく、ついに耀流三間飛車まで現れた。 pic.twitter.com/khrSfEP1hJ
— suimon (@floodgate_fan) August 2, 2020
三間飛車ミレニアム編ではコンピュータ将棋対局場floodgateでのMillaarq-kaiの将棋を紹介しましたが、本局は将棋倶楽部24でのHefeweizenの将棋です。Hefeweizenは、本ブログをよくご覧になっている方にはおなじみでしょう。
「耀龍」、そして耀龍四間飛車とは
耀龍三間飛車について説明する前に、「耀龍」、そして「耀龍四間飛車」についての説明が不可欠です。
「耀龍」とは、「あらゆる駒を耀かせ、龍の舞を披露し勝利へ導く」という意味をこめた、大橋貴洸六段が創った言葉です。大橋六段は、「耀龍」の名を付けた戦法の棋書を2020年10月時点で2冊リリースしています。「耀龍ひねり飛車」と「耀龍四間飛車」です。
今回取り上げているのは、このうちの耀龍四間飛車のほうになります。
耀龍四間飛車の一番の特徴は、棋書のタイトル「美濃囲いから王様を一路ずらしてみたら~」からもわかる通り△7二玉型であること、および金無双風の囲いに組むことです(参考1図)。
本書には大橋六段の読みやすさへのこだわりが詰まっており、フォントが一般的なマイナビの棋書と異なっていたり、局面図の位置が上段は右寄り、下段は左寄りに微調整されていたりします。
また、「▲3八飛には○○○がセット」「▲6八角と引けないタイミングで○○○が急所」や「▲3七角と上がられる前に○○○」など、ポイントの解説が理路整然としていてわかりやすいと感じます。
さらに4つのコラムは非常に独特で、個性の強さはこれまで読んできた棋書の中でもトップクラスです。
対居飛車穴熊の解説が一番のメインと言えますが、対左美濃、対急戦もしっかり解説されています。
耀龍三間飛車の可能性
耀龍四間飛車の説明はこのくらいにして、では「耀龍三間飛車」とは何かというと、この金無双風の囲いと三間飛車を組み合わせた布陣のことを呼んだ造語です(再掲載第2図)。大橋六段が生み出した布陣ではありません。
はじめに紹介した通り、コンピュータ将棋ソフトが指しているので、一つの戦術、三間飛車の新たな可能性として「あり」なのでしょう。
対銀冠では優秀だが
ただし個人的な見解を言うと、耀龍三間飛車の布陣はとりわけ優秀とは感じていません。
上述の実戦例では、居飛車銀冠に対し地下鉄飛車に構える構想を披露しています(第3図)。
地下鉄飛車に振り直す場合、元々の飛車の位置が四間でも三間でも結果的には差がありません。対銀冠では、耀龍三間飛車は耀龍四間飛車と同様非常に優秀です。
しかし対居飛車穴熊となると、耀龍三間飛車は耀龍四間飛車と比較してメリットがないかもしれません。
耀龍四間飛車は、広さと攻撃力(速攻)を売りにした戦法です。角道を開ける△4五歩が、そのまま△4六歩からの飛車先突破の狙いにつながります。また△5四銀・△6四歩型が、△6五歩から角筋をこじ開ける手段になります。
一方で耀龍三間飛車では、飛車が3筋にいるので△4六歩からの攻め筋がありません(飛車を四間に振り直すのは単なる一手損)。三間飛車の特徴である△5三銀型に組んだとしても、速攻の攻め味が増えるわけでもありません(△6四銀~△7五歩は△7二玉型では反動がきつすぎます)。
また、石田流と金無双の組み合わせも攻めの狙いどころに一貫性がなく(端攻め、玉頭攻めと3筋の飛車先突破が連動しない)チグハグです。
三間飛車ミレニアムのほうが優秀か
個人的な見解としては、居飛車穴熊に対し、堅さと反撃力で勝負所を持つ△5三銀型三間飛車ミレニアムには将来性を感じます。
一方、耀龍三間飛車は耀龍四間飛車に勝るメリットを見つけるのが難しく、採用数が増えていく可能性は低いかもしれません。
はたして今後どんな戦法・戦術が流行していくのか、注目です。
10月11日追記:耀龍石田流の実戦例
Hefeweizenの燿龍三間飛車の実戦例、なおかつ耀龍石田流三間飛車が新たに見つかったので、参考に紹介しておきます。
Hefeweizenの燿龍三間飛車の棋譜を新たに発見。
しかも燿龍石田流でした。
なんとも大模様の布陣で空中分解しそうに見えますが、Hefeweizenにとっては気にならないのでしょう。
▲2五歩から攻めたときの反動が比較的小さいのが、この玉形のメリットです。 pic.twitter.com/QERjVFv7K7— Fireworks@三間飛車のひとくちメモ (@thirdfilerook) October 8, 2020
(追記ここまで)
コメント
コメント一覧 (2件)
毎回興味深く読ませていただいています。
ところで、”耀龍”という用語を本文の囲いの名前として使うのは誤りのようです。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%80%80%E9%BE%8D%E5%9B%9B%E9%96%93%E9%A3%9B%E8%BB%8A
この囲いの名前の呼び方自体はいくつかあるようですが、いずれの呼び方もまだまだ確立してはいないようですね。
コメントありがとうございました。
ご指摘の通り、「燿龍」は囲いの名前ではなく、△7二玉型と玉頭攻めの構想を組み合わせた戦術の意味で書いているつもりです。
誤解を招く表現があったかもしれません。ご容赦ください。
金銀の配置は流動的なので、囲いの名前の定着は難しいかもしれませんね。