エルモ囲い右四間飛車、初の専門書
2020年6月23日に、エルモ囲い右四間飛車の初の専門書となる棋書「振り飛車を一刀両断!右四間飛車エルモ囲い」が発売になります。
著者は鈴木肇さん。元奨励会三段で、第32期全国アマ王将、第72期全日本アマチュア将棋名人などの実績を持つアマチュア強豪です。
「阿部光瑠六段、ノマ三で佐々木大地五段のエルモ囲い右四間に勝利 AbemaTVトーナメント」の記事でも触れた通り、鈴木肇アマは、2019年3月に行われた第5期叡王戦・アマチュア代表決定戦、▲森村賢平アマ王将 対 △鈴木肇アマ名人戦にて、森村アマ王将の先手石田流に対し後手エルモ囲い右四間で戦っており、この一局に勝利した鈴木アマ名人がアマ代表として第5期叡王戦に出場しました。
このような実績により、本書の著者として鈴木肇アマに白羽の矢が立ったのでしょう。
石田流三間飛車がメインターゲット
本書について、将棋情報局編集部さんが以下のツイートをしています。
6月発売予定の右四間飛車エルモ囲い本、
森内先生の推薦と佐々木勇気先生のコメントをいただき、豪華すぎるカバーが完成しました! pic.twitter.com/5WphIA2Dui— 将棋情報局編集部 (@mynavi_shogi) May 11, 2020
オシャレなデザインと、森内俊之九段の推薦、佐々木勇気七段のコメントに目を引かれますが、個人的にそれよりも注目したのは表紙に載っている局面(参考1図)とオビに載っている目次です。
序章 本書の概要
第1章 対石田流
第2章 対三間飛車
第3章 対四間飛車
第4章 序盤徹底考察編
第5章 実践編
第6章 右四間飛車の宿命
第1章が「対石田流」、第2章が「対三間飛車」と、三間飛車関連の戦法がメインターゲットになっています。
先手石田流や(ノーマル)三間飛車は人気がありかつ強敵なので、それに対抗できる新たな戦術としてエルモ囲い右四間を推しているのでしょう。
船囲い右四間VS三間飛車は三間十分だが
右四間飛車VS(ノーマル)三間飛車について、補足しておきます。
エルモ囲いが登場する前は、船囲い右四間飛車VS三間飛車が普通でした。
そもそも、級位者の方ならば「囲いによらず、右四間に対し三間飛車では受ける筋が間違っているので簡単に潰されるんじゃないの?」と疑問に思うのが普通だと思います。
しかし実際には、三間飛車は船囲い右四間の攻めをまともに受け止めるのではなく「いなす」ことで、十分に戦えるとされています。
すなわち、
船囲い右四間飛車VS三間飛車は三間飛車十分
これが前提にあります。
それに対し、
囲いを船囲いからエルモ囲いに組み替えることで、この結論が覆り右四間飛車が十分戦える
ということを主張するのが本書と言えると思います。
おそらく本書の冒頭でもこのストーリーの説明があるのではないでしょうか。
先手石田流にとっての新たな強敵
また、先手石田流に対しては、4手目△4二玉とすれば▲6六歩がほぼ必然になり(▲7八飛や▲6八飛もありますが)、以下居飛車は左美濃に組むのが定番でした。これでも居飛車は互角(以上?)です。
ここに、新たに右四間飛車エルモ囲いが先手石田流対策として加わったことになります。
先手石田流に対し右四間飛車エルモ囲いが強敵としてとらえられていることは、以下の黒沢怜生五段と都成竜馬五段の対談記事の中でも語られています。
三間飛車対策に悩む居飛車党と、それを迎え撃つ三間飛車党に
この「振り飛車を一刀両断!右四間飛車エルモ囲い」は、既存の三間飛車対策で結果が出ずに悩む居飛車党や急戦党にうってつけの棋書でしょう。
三間飛車党にとっても、見慣れない右四間飛車エルモ囲いを迎え撃つために、本書を読んで穴探しをしておくと良いのではないでしょうか。
コメント