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先崎九段のうっかり三間飛車
2019年9月3日に行われた順位戦C級1組、▲先崎学九段 対 △船江恒平六段戦。棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報で観ることができます。
数多くの将棋エッセイを綴り、最近では「うつ病九段」の大ヒット&ロングセラーで知られる古豪・先崎学九段。
本局では、昇級候補の強豪・船江六段相手に、初手▲5六歩と突いて中飛車で戦う意向を見せました。・・・と思いきや、以下△8四歩▲7六歩△6二銀▲1六歩△1四歩のところで、5筋を通り越して▲7八飛(第1図)!
うっかりミスのような、いわゆる「うっかり三間飛車」です。後手が角道を開けてこないため、気が変わったのかもしれません。
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「うっかり三間飛車」とは、菅井竜也七段(当時)が2017年に披露した▲5六歩型(△5四歩型)の三間飛車です。第58期王位戦七番勝負、羽生善治王位 対 菅井七段戦で3局も現れたことで、一躍注目戦法となりました。
先手番うっかり三間飛車は、他にも参考1図のようなケースがあります。
先手番うっかり三間飛車では、居飛車側の指し手がほとんど進んでいないため、後手番うっかり三間飛車(参考2図。▲2四歩や▲2二角成〜▲5三角などの際どい変化がある)のような一触即発感はありません。
果たして、本譜は乱戦にはならず、角道を止めるオーソドックスな▲5七銀型ノーマル三間飛車になり、さらにはお互いじっくり囲いあって▲4六銀型三間飛車穴熊VS△銀冠穴熊の戦いになりました。持ち時間が長く、力を出し切れるじっくりとした戦いにしたいという思いが盤上に現れる、順位戦らしい進行と言えるかもしれません。
先崎九段、攻め切る
本譜はその後、自陣左辺の駒をすべて綺麗にさばきつつ飛車成りに成功した先崎九段が、船江六段の穴熊に攻めかかりました。
船江六段も駒をはがされては埋め、を繰り返し必死に防戦しますが、先崎九段の猛烈な食い付きを振りほどくことはできず、145手で先崎九段の勝利。先崎九段の振り飛車穴熊は、端香を釣り上げられた以外は完全に無傷でした。
これで先崎九段の順位戦成績は2勝2敗に。病魔からの復帰後、徐々に復調傾向にあるのかもしれません。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改
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