阪田流向かい飛車と菅井流三間飛車を解説
2019年7月24日に、阪田流向かい飛車と菅井流三間飛車(阪田流三間飛車とも呼ばれています)を解説する「△3三金型振り飛車 徹底ガイド」が発売されることがわかりました。
著者は安用寺孝功六段。先日(2019年5月5日)放送された第69回NHK杯テレビ将棋トーナメント1回戦では、谷川浩司九段に相振り三間飛車で見事勝利、昨年の第68回NHK杯2回戦では広瀬章人八段(当時)に三間飛車トマホークで挑むなど、本ブログでも注目している棋士のひとりです。

2つの△3三金型振り飛車
初手から▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩△3二金▲3三角成△同金と進むと第1図になります。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v王 ・v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v金v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 王 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=8 △3三同金まで
ここから△2二飛と振れば阪田流向かい飛車、△3二飛と振れば菅井流三間飛車です。
「△3三金型」というくくりでこの2つの戦法をまとめたのは、とても良いのではないかと思います。
ずっと昔から存在する阪田流向かい飛車を好んで指している力戦振り飛車党にとっては、阪田流向かい飛車の最新形と、新たな力戦振り飛車の選択肢として菅井流三間飛車(△3三金型三間飛車)を覚えることができますし、最新形を好む三間飛車党にとっては、菅井流三間飛車を指すにあたって予備知識として必須に近い阪田流向かい飛車を一緒に覚えることができます。
それぞれについて、簡単に説明しておきます。
阪田流向かい飛車
商品紹介の言葉を借りると、阪田流向かい飛車は明治から昭和初期に活躍した阪田三吉贈名人・王将が創案した戦法で、糸谷哲郎八段などの現代のトップ棋士も採用する古くて新しい戦法です(参考1図)。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀 ・v王 ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v金v銀 ・v飛 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v金 ・v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 銀 王 ・ ・ ・ 銀 飛 ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=0 △2四歩まで
本書では△5二金型速攻、△7二玉型、対左美濃、持久戦とさまざまな阪田流のバリエーションが解説されています。
菅井流三間飛車(阪田流三間飛車)
一方の菅井流三間飛車は、2017年8月に行われた第58期王位戦第5局、▲羽生善治三冠 対 △菅井竜也七段戦(肩書は当時)にて菅井七段が披露し(参考2図)、しかも勝って王位を獲得したことで一躍有名となりました。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・ ・ ・v飛 ・ ・|二 | ・v歩v歩v歩v銀v歩v桂v歩v歩|三 |v歩 ・ ・ ・v歩 ・v金 ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 歩 ・|五 | 歩 ・ ・ 歩 歩 銀 ・ ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ ・ 王 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=0 △3三桂まで

本戦法は2018年10月、将棋ウォーズの戦法コレクションに「菅井流三間飛車」という戦法名で新たに加わりました。

また、坂田三吉が一度も採用していないにもかかわらず、出だしが阪田流向かい飛車と同じであることから、これをもじって「阪田流三間飛車」と呼ばれたりもしています。
本書では単に「△3三金型三間飛車」と呼んでいますが、「菅井流三間飛車」という名称が棋界に浸透し切っていないから、という判断かもしれません。
菅井流三間飛車を指し始めたい三間飛車党にとって、必読の一冊でしょう。
発売前に新たな△3三金型三間飛車登場
余談ですが、本書の発売が公表された直後の2019年5月31日に行われた第32期竜王戦4組決勝、▲藤井聡太七段 対 △菅井竜也七段戦で、菅井七段が角交換しない新たな△3三金型三間飛車を披露しました(参考3図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v王 ・v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v金v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 角 ・ 王 ・ 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=10 △3三金まで

これには安用寺六段も将棋情報局編集部も頭を抱えたかもしれません。
本書の目次
最後に本書の目次を紹介します。
序章 △3三金型振り飛車の基本
第1章 阪田流向かい飛車 △5二金型速攻
第2章 阪田流向かい飛車 △7二玉型
第1節 ▲7七銀型
第2節 ▲7七銀保留型
第3章 阪田流向かい飛車 対左美濃
第4章 阪田流向かい飛車 持久戦編
第5章 △3三金型三間飛車
第1節 △3三桂~△2五桂型
第2節 △5四銀型
第3節 ▲5六歩型
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