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永瀬七段の三間飛車藤井システム
2019年5月1日、令和元年の初日に行われた第45期棋王戦予選、▲本田奎四段 対 △永瀬拓矢七段戦。棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
先手番となった居飛車党の本田四段は初手▲2六歩で居飛車を明示。それに対し後手番・永瀬七段は、3手目△4四歩からしばらく態度を保留したあと、三間飛車に構えました(第1図)。
居玉+△4三銀+△9五歩型で、三間飛車藤井システムの出だしです。
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△9四歩の打診に対し相手をしてくれなかったことから、デビュー当時生粋の振り飛車党だった永瀬七段は、急に飛車を振りたくなったのかもしれません。もしくは第4期叡王戦七番勝負第3局以降のために、相居飛車の戦術を温存したのかもしれません。
本田奎四段の超急戦棒銀
対する本田四段の採った作戦は、アマチュアもビックリの超急戦棒銀でした(第2図)。
6八に玉がいる中途半端な状態での仕掛けです。しかし、後手の△6二玉型と見合いと見ているのかもしれません。また、のちに本譜で出てくるように、△9九角成のあとに▲7八銀と手を戻して受ける形がしっかりしている、と見ている可能性もあります。
相手の陣形の不備を突いて速攻を仕掛け、中盤の折衝のあとに自玉に手を戻すという手順の組み立ては、コンピュータ将棋ソフトが好みそうな今風の発想です。
今風の戦術を好む本田奎四段
本局含めデビュー以来8勝2敗と好調の本田四段。三間飛車党の山本博志四段と四段昇段が同期であることは全く関係ないでしょうが、対三間飛車を本局含め3局もこなしています(2勝1敗)。
その戦型選択が今風で、本局の超急戦棒銀の他は▲4五歩早仕掛け(参考1図。渡辺正和五段戦。一周回って現代風な急戦)とelmo囲い右四間飛車(参考2図。西田拓也四段戦)でした。
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また、対ノーマル四間飛車も一局あり、その一局ではelmo囲い+斜め棒銀(△6四銀型急戦。門倉啓太五段戦)を採用しています。
居飛車穴熊に堅く囲ってから攻める戦術とは対極とも言える戦術を今のところ採用し続けている本田四段。対抗形で急戦を好む方は、本田四段の対局に注目してみると面白いかもしれません。
永瀬七段、連勝ストップ
本譜はこのあと、第3図のように進行。
後手から見て、駒損であるものの、
POINT
- 馬を作っている
- 左桂がさばけている
- 4一の香が攻守に効いている
ということで後手わずかに良しの形勢だったようですが、永瀬七段がまさかの寄せ間違いで本田四段が有利に。その後永瀬七段が妖しくねばるもののそれを振り切り、本田四段が見事金星をあげました。
10連勝以上続いていた永瀬七段の連勝がここでストップ。高見泰地叡王との叡王戦七番勝負にどう影響してくるか、注目です。
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