羽生善治棋聖、竜王位を奪取し永世竜王・永世七冠に
第30期竜王戦第5局、羽生善治棋聖 対 渡辺明竜王戦は、先手・羽生棋聖の勝利。
通算成績を4勝1敗とし、竜王位を奪取して永世竜王の資格を獲得、さらには永世七冠を達成しました。
おめでとうございます。
棋譜と解説は、竜王戦中継サイトで観ることができます(2017年12月時点)。
戦型は角換わりだったため、本サイトでの紹介は割愛します。
代わりに、永世七冠達成記念として、羽生竜王がここ10年間のタイトル戦で三間飛車を採用した将棋を2局紹介します。
いずれも2手目△3二飛戦法(後手番猫だまし戦法。第1図)です。
2008年 第49期王位戦第2局 羽生名人の2手目△3二飛戦法
深浦康市王位に羽生善治四冠(名人、棋聖、王座、王将)が挑んだ第49期王位戦第2局で、羽生名人は2手目△3二飛戦法を採用。
2007年度の升田幸三賞に輝いた当時の新構想・2手目△3二飛戦法(受賞者は今泉健司・当時奨励会三段)を、羽生名人自身はそれまで1局しか採用していなかったにも関わらず、大舞台で臆することなく採用したところがさすがです。
今回の竜王獲得後の記者会見で、
指していく中で何かしらの発見、進歩を感じていければと思う。
伝統的な世界だが、盤上で起こっているのはテクノロジーの世界で、日進月歩で進んでいく。
過去のことはあまり意味がなくて最先端を探求していく気持ちが必要です。
と語っていますが、これを実践しています。
本譜は2手目△3二飛に対し先手・深浦王位は3手目▲9六歩と突き、後手の動きを打診。
開始早々の端歩突きは、現代の様々な振り飛車に対する居飛車の手としても幅広い局面で採用され続けています。
続いて後手が△9四歩とお付き合いしたため、先手は端攻めを絡めながら激しい戦いを選択(第2図)。
この将棋はそのまま定跡となり、「2手目の革新 3二飛戦法」(長岡裕也五段 著)にも第2図と同一局面が載っています。
第2図以下、後手・羽生名人が優勢となりましたが、先手・深浦王位が逆転して勝利。
王位戦はこの後4勝3敗のフルセットで深浦王位の防衛となりました。
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2012年 第60期王座戦第4局 羽生二冠の後手番猫だまし戦法
続いて、渡辺明王座に羽生善治二冠(棋聖、王位)が挑んだ第60期王座戦第4局で、羽生二冠は上述の対局以来4年ぶりに後手番猫だまし戦法を採用。
棋譜と解説は、王座戦中継サイトで観ることができます(2017年12月時点)。
羽生二冠がひさびさに後手番猫だまし戦法を採用した背景には、3手目▲2六歩に対して4手目△4二銀(第3図)の新手が現れたのがきっかけと考えられます。
従来は3手目▲2六歩に対しては4手目△6二玉の一手と考えられており、その後の研究で先手がやれるのではないか、と言われていました。
これに対し、佐藤康光九段が2011年に4手目△4二銀の新手を披露。
戦術の幅を大きく広げた2手目△3二飛戦法は、ふたたび脚光を集めました。
この4手目△4二銀型と渡辺ー羽生戦の序盤については、「素敵三間飛車」様の以下の2つの記事で詳しく解説されているので、興味のある方はご参照ください。
素敵三間飛車 2手目3二飛戦法 4 佐藤新手 後手の基本方針 (中級~)
本譜はこの後、天守閣4枚美濃 対 ノーマル三間飛車+高美濃囲いの戦型へ(第4図)。
終盤、羽生二冠のただ捨てかつ詰めろ逃れの詰めろとなる奇手(第4図)が飛び出し、当時大いに話題になりました。
結果的に本局は千日手になりましたが、千日手指し直し局を制した羽生二冠が通算成績3勝1敗で王座を奪取しました。
タイトル獲得通算100期超え、そして藤井聡太四段とのタイトル戦へ
話を現在に戻すと、これで羽生竜王はタイトル獲得通算99期を達成。
ひとつでも防衛すれば通算100期を狙えるところまできました。
ぜひとも達成してほしいものです。
さらにその後もタイトルを保持し続け、大舞台での藤井聡太四段(その頃にはもう五段以上でしょうか)との番勝負を見てみたい、というのが全将棋ファン、ならびに日本国民の思いでしょう。
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