佐藤康光九段の2手目△3二飛戦法
第31期竜王戦1組出場者決定戦、▲糸谷哲郎八段 対 △佐藤康光九段戦。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます(2018年6月時点。有料)。
本局に勝った方が竜王戦1組5位として決勝トーナメントに進出できる、非常に重要な一局です。
この一局で後手・佐藤九段が採用したのは、大胆にも2手目△3二飛戦法(後手番猫だまし戦法)でした。
2手目△3二飛戦法について、詳しくは下記記事などを参照ください。
2008年の記事ですので、後述する新手が発見される前の記事です。
2手目△3二飛戦法の戦略性を向上させた佐藤九段
話はそれますが、佐藤康光九段は2手目△3二飛戦法の歴史に大きな足跡を残しています。
2007年12月にプロの公式戦で初めて指された2手目△3二飛戦法は、はじめは後手番で手損なく石田流に組むというのが一番の狙いでした。
居飛車の3手目▲2六歩に対しては△6二玉と上がり、その後△3四歩〜△7二玉〜△3五歩〜△3四飛のように駒組みを進めます。
ところが2011年5月に行われた第24期竜王戦1組、▲木村一基八段(当時)対△佐藤康光九段にて、初手から▲7六歩△3二飛▲2六歩に対し、佐藤九段が4手目△4二銀の新手を披露しました(第2図)。
銀を4二に上がってしまうと、浮き飛車にしたときに2二に隙ができてしまうので、もはや居飛車側が許してくれない限り石田流に組むことはできません。
では何が狙いかというと、石田流に組むことではなく、第2図以下△3四歩のあと△3五歩とは突かずに角道を開けたまま低い陣形で駒組みを進め、居飛車穴熊に組むのを牽制するのが主な狙いとなります。
角交換振り飛車になることをいとわない、むしろ居飛車から角交換してくることは大歓迎(手得するので)の作戦でもあります。
佐藤九段の4手目△4二銀が、2手目△3二飛戦法の戦略性を大きく向上させたのです。
三間飛車穴熊 対 ▲6六歩型銀冠穴熊
戻って、本譜でも佐藤九段は4手目△4二銀を採用しました。
対する糸谷八段は9筋の端歩を早々に突く趣向をみせます。
それを見た佐藤九段は△4四歩とあっさりと角道を止め、ノーマル三間飛車穴熊へ。
端に手をかけてくれた分、三間飛車穴熊に組むのが十分に間に合うとみたのでしょうか。
一方の糸谷八段は▲6六歩型の銀冠に組んだ後、▲9八香と上がって居飛車穴熊へ。
— Fireworks (@thirdfilerook) 2018年6月12日
通常の三間飛車穴熊対居飛車穴熊の形(参考図)と比較すると、居飛車側の穴熊は堅さと広さ両方を求めた欲張りな形といえます。
とはいえバランスが崩れたわけではなく、これも一局の序盤戦です。
このあと右銀を6八→7九→8八と移動できれば立派な四枚穴熊となりますが、後手の石田流への組み換えの方が価値が高いと見たか、そうなる前に糸谷八段は仕掛けました。
しかし、佐藤九段がうまいさばきと細い攻めをつなげるテクニックを見せ、さらには端からの逆襲を成功させ、快勝しました。
詳しくは将棋連盟ライブ中継アプリでご覧ください。
豪華な竜王戦決勝トーナメント
本局に勝って、竜王戦決勝トーナメントに駒を進めた佐藤康光九段。
他の組も決着がつき、決勝トーナメント進出者が出揃いました(下記リンク参照)。
何とも豪華なメンバーです。
昨年度、順位戦C級2組でそろって昇級を果たした都成竜馬四段、増田康宏五段、そして藤井聡太七段。
そのほかは千葉幸生七段と松尾歩八段を除いた6人!が順位戦A級棋士です。
羽生善治竜王への挑戦を決めるトーナメントの行方から、目が離せません。
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