西田拓也四段、初優勝
第7期加古川青流戦決勝三番勝負にて、西田拓也四段が前年優勝の井出隼平四段を2勝1敗で下し、初優勝しました。2勝はいずれも石田流を採用した将棋です。おめでとうございます。
棋譜と解説は、加古川青流戦のWebサイトで観ることができます(2017年10月時点)。
第1局 居飛車穴熊 対 四間飛車穴熊
振り飛車党同士の対戦となった今回の決勝三番勝負。
第1局は、先手・井出四段の居飛車穴熊 対 後手・西田四段の四間飛車穴熊となり、井出四段の勝利。四間飛車の将棋のため内容の紹介は割愛します。
第2局 石田流▲7七角型 対 左美濃
続く第2局で先手・西田四段は3手目▲7五歩。
4手目△4二玉だったため▲6六歩と角道を止め、以下、石田流▲7七角型 対 左美濃の戦いとなりました(第1図)。
宮本流の▲3九玉型は採らず、比較的早めに▲2八玉と上がっています。この形は特に「菅井ノート 先手編」(菅井竜也王位 著)で非常に詳しく解説されています。
本譜はこの後「菅井ノート」にも載っていない新手が飛び出し(第2図)、西田四段ペースの中盤戦となりました。
結果は西田四段の勝利。終盤戦、鉄壁の美濃囲いの強みを活かし、焦らず着実に後手玉に迫る寄せが参考になります。
第3局 4手目△1四歩からの相振り飛車
三番勝負最終局は、あらためて振り駒が行われた結果、西田四段の先手に。
西田四段はふたたび3手目▲7五歩からの石田流に命運を託しました。
対する井出四段の4手目は△1四歩。先手の意向をうかがう様子見の一手で、近年の石田流対策の中でとても多い指し手です。
次の5手目が早くも作戦の岐路であり、▲1六歩には相振り飛車(▲1六歩を緩手にする狙い)、▲7八飛や▲6六歩には端の位をとって居飛車を目指してくるのが、後手のよくある構想です。西田四段は5手目▲1六歩を選択。以下、角交換から相振り飛車に進みました(第3図)。
以下相向かい飛車になりましたが、井出四段に緩手があり、西田四段の作戦勝ちに。
そのまま押し切って、西田四段の初優勝となりました。
5手目▲7八飛の変化
なお、戻って5手目▲7八飛は、有名なところでは里見香奈女流五冠が多用しており、2017年1月から2月にかけて行われた第43期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第5局では、先手番となった第2局と第4局でいずれも5手目▲7八飛を採用しています。
第4図は第4局の序盤戦です。
下記のサイトにて、棋譜と解説を観ることができます(2017年10月時点)。
関連棋書
「菅井ノート 先手編」(菅井竜也王位 著)、「わかる!勝てる!!石田流」(宮本広志五段 著)、「石田流を指しこなす本【持久戦と新しい動き】」(戸辺誠七段 著)では、5手目▲1六歩と▲7八飛の両方が解説されています。
「菅井ノート」では、5手目▲7八飛以下の展開は振り飛車が対抗策を模索中、と書かれていますが、それよりも後に発売された「わかる!勝てる!!石田流」と「石田流を指しこなす本」では、5手目▲1六歩と▲7八飛どちらでも石田流が十分戦えることが示されています。
棋風にあったほうを選ぶとよいでしょう。
石田流健在
最近は、NHK将棋フォーカスで放送中の三間飛車藤井システム(久保システム)講座や「三間飛車新時代」発売の影響で、角道を止めるノーマル三間飛車が話題を集めていますが、石田流ももちろん健在です。
西田四段の三間飛車と石田流にもますます注目していきたいと思います。
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