※この記事は、2003年に書いた記事に加筆修正を加えたものです。
目次
鈴木大介六段の先手番3・4・3戦法
1999年に行われた第12期竜王戦七番勝負第3局、▲鈴木大介六段 対 △藤井猛竜王戦より(段位は当時)。
3・4・3戦法(「石田流の基礎知識 3・4・3戦法とは」参照)の序盤戦です(第1図)。
普通は3・4・3戦法側が後手ですが、本局では鈴木六段が先手番で採用しており、▲1六歩が入っています。
第1図以下の指し手
▲7八飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛
▲2二角成 △同 銀
▲8八飛 △8七歩
▲9八飛 △8四飛
▲7八金 △5五歩
▲8八歩 (第2図)
△8七歩▲9八飛以下、△8八角から一気にいくのは振り飛車側が有利となる(詳しくは石田流の定跡書などを参照ください)ので、じっと△8四飛。ここまでは互角です。
しかし最終手▲8八歩が悪手。部分的には手筋の一着ですが、この局面ではもうひとつの手筋・▲6五角と打っておくべきで、それなら互角でした。
第2図以下の指し手
△2四角!
▲6六角 △5四飛!
▲8七歩 △5三銀
▲6八銀 △6四銀
▲9六歩 △6五銀(第3図)
中央志向へ
中央に手を求めた後手・藤井竜王の構想が見事。
先手は▲8八歩と打ったからには▲8七歩とせねばならず、中央への対応が遅れています。それにより後手の右銀の進出が間に合っています。
このような中央志向を防ぐために、▲8八歩と打ったところでは▲6五角と打って8七の歩を角で取りにいき、かつ△5四飛と回らせないようにするべきだったわけです。
なお、△2四角に対し▲6八銀は、△5六歩▲同歩△6八角成▲同金△8八歩成(参考図)などの筋があり危険です。
以下後手勝ち 。
さすが、というべき藤井先生の構想でした。
2018年追記 藤井聡太竜王の前に・・・
はじめに書いた通り、この将棋は約20年前の1999年に行われた第12期竜王戦七番勝負第3局、▲鈴木大介六段 対 △藤井猛竜王戦(段位は当時)です。
最近将棋を始めた将棋ファンの方々にとっては、藤井九段と鈴木九段がタイトル戦で争ったことがあるのを知ったら驚くのではないでしょうか。
いずれ藤井聡太竜王が誕生し、盤石の地位を築くことになるかもしれませんが、その前に竜王戦3連覇を果たした偉大な「藤井竜王」がいたことを、時々でいいので思い出してあげてください。
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