居飛車穴熊VSノーマル三間飛車
2020年9月15日に行われた第79期順位戦A級、▲豊島将之竜王 対 △菅井竜也八段戦。
棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報または将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
立ち上がり、菅井八段は角道を止めてノーマル三間飛車を明示。それを見た豊島竜王は、居飛車穴熊を選択しました。
クラシカルな対抗形
菅井八段は石田流に組み換えることもなく四間に振り直し、駆け引きの末藤井システム以前のようなクラシカルな居飛車穴熊VS四間飛車の形となりました。
第3回AbemaTVトーナメントでの「チーム振り飛車」の盟友・今泉健司五段(もう一人のチームメイトは久保利明九段)は、この展開を見て以下のようにツイートしています。
最近、巡り巡って、ノーマル振り飛車に戻ってきているのが面白いです。
A級の将棋は、私も奨励会の頃沢山指した将棋です。一局ながら、振り飛車も十分やれると思います。ゆっくりした捻り合いがとても楽しみです(^^)— 今泉健司 (@konsen1208) September 15, 2020
しかし、序盤の戦型が何だったかは、中盤以降の激闘からすればほんの些末なことでしかなかった、と言えるかもしれません。
穴熊の暴力、妙防、囲いの修復
中盤、豊島竜王が飛車を切って菅井玉に食い付いていく「穴熊の暴力」の攻めを見せますが、菅井八段が水面下で竜を自陣に引き付ける変化を含む妙防で受け止めて優勢に。この時点で140手目辺りです。
しかししかし、ここからがむしろ本番でした。
豊島竜王は、穴熊をはがされたら埋めてを繰り返して全く土俵を割らず、菅井玉に嫌味を付けて迫り続けます。
最終盤には豪快な飛車捨てを連発して自玉の脅威を外し、玉が見えない形に持ち込む手順には度肝を抜かれました。
駒の密集度が高く、複雑な局面が続いたのも見応えがあった要因の一つです。
菅井八段、200手越えの大激闘を制す
最終的に、穴熊にこもり続けた豊島玉を菅井八段が完全包囲して(必至をかけて)勝利。総手数204手の大激闘でした。
驚くべきことに、菅井八段が順位戦で持ち時間を使い切って秒読みになったのは本局が初だそうです。
持ち時間が各6時間と長い順位戦とはいえ、これまで秒読みに追い込まれることなく勝ち続けてA級まで速いペースで駆け上がってきたとは、驚くべきことです。
しかし順位戦A級ともなり、ましてや藤井聡太二冠に5戦全勝している「ラスボス」豊島竜王が相手となれば、いよいよかんたんに勝てる将棋はないということが数字で示されたとも言えるかもしれません。
今期の順位戦A級で唯一の振り飛車党である菅井八段。今後の順位戦での活躍にも期待したいと思います。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.89 / 振電改
コメント