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7月号の特集は「横歩取り青野流」
現在発売中の将棋世界2018年7月号の戦術特集は、「横歩取り青野流」。
「横歩取り勇気流」とともに、第45回升田幸三賞を受賞した戦法です。
将棋大賞 - 升田幸三賞 - Wikipedia
昨今のプロ棋界では、横歩取りといえば青野流というくらいによく指されています。
現在進行中の名人戦7番勝負・佐藤天彦名人 対 羽生善治竜王戦でも、5局中3局が横歩取り、うち2局が青野流(17手目▲5八玉)です。
居飛車党の方には必見のテーマでしょう。
8月号の特集は「角交換相振り飛車」
振り飛車党の方には、ここからが本題です。
将棋世界2018年7月号の巻末に載っている次号予告によると、8月号の戦術特集は「角交換相振り飛車」。
タイトルの下に載っているキャッチコピーには、
相振りも角交換の時代。
振り飛車党はいち早くチェック
と書かれています。
Amazonの予約ページに載っている目次によると、井出隼平四段(戦術講座担当)、高野智史四段(連載講座「最新型はサトシにお任せ」担当)、瀬川昌司五段(自戦記担当)、西田拓也四段(付録担当)が執筆しているようです。
実のところ、どんな局面が解説されるのかピンとこない、というのが率直な感想です。
プロ棋界でいえば、ただでさえ相振り飛車が少ないうえ、角交換が入るとさらにレアケースとなります。
何が流行っているのかよくわからず予想が難しいですが、解説されるであろう候補局面をいくつか挙げてみます。
先手三間飛車の候補局面
三間飛車党ならば真っ先に思い浮かぶのが、3手目▲7五歩(第1図)の石田流志向からの相振り飛車の展開。
まず4手目△3五歩からの相三間飛車では、互いに角道オープンなので角交換相振り飛車になりやすそうですが、意外にも角交換をせず同型で駒組みを進めるのが基本定跡です。
阿部健治郎七段が編み出した、相三間での先手美濃囲いに対する金無双+早めの角交換+棒銀の構想(第2図)は、形勢のバランスが崩れている(後手作戦勝ちと言われている)ため紹介されてもごくわずかでしょう。
続いて先手三間対後手中飛車(左穴熊含む)では、4手目△5四歩に対し▲7八飛は危険(角交換から△4五角がある)なので▲6六歩と突くのが基本定跡となっており、角交換にはなりません。
先手三間対後手向かい飛車は4手目△4四歩と突くのが基本(基本ではない後手向かい飛車については後述します)。
先手三間対4手目△4二飛からの後手角道オープン四間飛車は、角交換相振り飛車になるオープニングとして有力です。
一例としては、後手から角交換してきたあと、互いに向かい飛車に振り直す定跡があります(第3図)。
参考棋書
4手目△1四歩からの相振り飛車が最有力か
やや意外ですが、3手目▲7五歩に対して4手目△1四歩からの角交換相振り飛車が最有力かもしれません。
5手目に▲1六歩と突かないと後手は端の位をとって居飛車にしてくるので論外ですが、▲1六歩と突くと△5四歩(第4図)から向かい振り飛車を目指してくるのが有名な定跡です。
ここで▲6六歩と突くと、以下△4四角▲7八飛△2二飛▲4八玉△2四歩▲3八玉△2五歩(第5図)で端攻めと2筋攻めを見せられ、▲1六歩と突いた手をとがめられた格好になり先手作戦負けと言われています。
そこで戸辺誠七段は著書「石田流を指しこなす本【持久戦と新しい動き】」で▲6六歩の代わりに▲6八飛(第6図)を推奨しており、これは角交換になりやすい展開です。
先手はこのあと飛車を7筋に振り直して駒組みを進めます。
石田流党にとって興味のある局面ですし、第6図以下の攻防が特集で取り上げられる可能性は高いのではないでしょうか。
参考棋書
その他:先手角道オープン四間飛車が有力
先手三間飛車以外で角交換相振り飛車になるオープニングは?というと、まず先手向かい飛車は▲6六歩と角道を止めてから組む形。
先手中飛車は対後手三間飛車の相振り飛車になりやすいですが、▲5五歩と突いて角道を止めるため、序盤早々の角交換は基本的に行われません。
となると、有力なのは3手目▲6八飛の角道オープン四間飛車からの角交換相振り飛車でしょう。
対する後手は、三間飛車にするのは角交換からの▲6五角問題があってやや危険と言われています。
後手中飛車も危険です。
相角道オープン四間飛車は地味な戦いになりやすく華がないので解説は少ないと予想。
というわけで残るは後手向かい飛車。
3手目▲6八飛のあと、△2四歩▲4八玉△2五歩▲3八玉△5四歩▲5八金左△8八角成▲同銀△2二飛(第7図)、というのが手順を尽くした美しい定跡で、第7図以下の攻防も合わせ、ぜひ解説してほしい局面です。
手順中△5四歩は▲6五角を防いだ手で、△5四歩に対し▲2二角成△同飛▲5三角としても、△4二角(第8図)がぴったり。
歩が2五、3四にいるため、右辺に角が成れません。
参考棋書
予想局面まとめ
考察はここまでにして、解説されるであろう予想局面図を以下にまとめます。
本命
先手三間飛車(4→3戦法) 対 4手目△1四歩からの向かい飛車(再掲載第6図)
対抗1
先手三間飛車 対 後手角道オープン四間飛車(再掲載第3図)
対抗2
先手四間飛車 対 後手△5四歩型向かい飛車(再掲載第7図)
はたしてどんな特集になるのか、注目です。
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