斎藤慎太郎八段 対 佐藤康光九段
2021年7月29日に行われた第80期順位戦A級2回戦、▲斎藤慎太郎八段 対 △佐藤康光九段戦。
棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報または将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
ノーマル三間飛車+振り飛車ミレニアム
順位戦A級という大舞台で後手・佐藤九段は、なんと角道を止めるオーソドックスな三間飛車を採用。
さらには振り飛車ミレニアムに囲いました。
佐藤九段が2手目△3二飛戦法や角交換ダイレクト向かい飛車など、角道オープン系の力戦振り飛車をよく採用しているのは周知の通りです。
しかし、角道を止める振り飛車を採用するのはごくまれです。
さらには定番の美濃囲いや振り飛車穴熊ではなく振り飛車ミレニアムを採用するとは、あまりの大胆不敵さに恐れ入ります。
三間飛車を指したかった佐藤康光九段
とはいえその予兆がなかったわけではありません。正統派の居飛車と力戦振り飛車を数多く指している佐藤康光九段ですが、実はノーマル振り飛車を指したい欲求も持っていました。
例えば2018年の年末のインタビューにて、ノーマル振り飛車に関する質問に対し以下のように答えています。
――陽動振り飛車や、ダイレクト向かい飛車を含む角交換振り飛車は指されるのに、ノーマル振り飛車は指されないですよね。本書でも前述の三間飛車しか登場しません。
「本当は指してみたいのですが。藤井システムとか、升田式石田流とか。以前出した『佐藤康光の石田流破り』(日本将棋連盟)のまえがきでいずれ石田流を指したいと書いたのですが、まだ指せてません」
居飛車党の棋士の中には、少なからず「たまには振り飛車も指してみたい」と思っている方もいるのではないかと思いますが、生活がかかっているので実際に採用するには大きな決断が必要であり、実際のところその決断ができる棋士はほんの一握りです。
佐藤九段は今回その決断をしたわけですが、その舞台が順位戦A級。繰り返しになりますが、なんとも大胆不敵です。
結果は
さて気になる結果は、先手・斎藤慎太郎八段の勝利。
佐藤九段の試みは残念ながら失敗に終わりました。が、今後も果敢な戦型選択に挑んでくれることを期待しています。
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