オールラウンダー・ 黒田尭之五段
2020年度の第79期順位戦C級2組で9勝1敗の成績をおさめ、見事C級1組への昇級を果たした黒田尭之五段。
過去にYoutube動画内のインタビューで以下のように発言している、オールラウンダーの棋士です。
序盤は何を指しても良い勝負になると考えていて、評価値で言うと例えば−200だとか−300だとか、そんな数字なら人間同士ならなんとでもなると思っている
第79期順位戦C級2組では、自らが振り飛車を6局採用(うち三間飛車が3局、四間飛車が2局、中飛車が1局)しているのに加え、対振り飛車が4局(うち対三間飛車が3局、対中飛車が1局)。
つまり全10局すべてが居飛車VS振り飛車の対抗系で、うち6局が三間飛車絡みでした。
初手▲6八玉を採用
そんな黒田五段ですが、2020年11月に行われた第29期銀河戦、△山本博志四段戦にて、初手▲6八玉(第1図)と指したことで話題となりました。
棋譜は銀河戦のサイトで観ることができます(2022年2月時点)。
初手▲6八玉は、振り飛車に対しては▲2六歩と飛車先の歩を伸ばす手を保留できるため得となりえますが、相居飛車の将棋では玉の位置を早く決め過ぎで得とは見られていない一手です。
したがって、相手が振り飛車党のときに採用しやすく、見方によっては「あなたは居飛車を指しませんよね(指せませんよね)」という挑発ともとられかねません。
山本四段は言わずと知れた三間飛車党ですが、この初手を見てついカッとなり居飛車を採用(詳しくは後述のツイートを参照ください)し、相掛かり系の将棋に。結果は、相居飛車の経験値の差が出て黒田四段(当時)の勝ちとなりました。
初手▲6八玉の意味
この初手▲6八玉について、決して振り飛車党に対する挑発の意図ではなく、相居飛車に進んだ場合に対しても周到な準備をしていたことを、黒田五段はのち述懐しており、参考になります。
山本四段は、黒田五段のこれらツイートに対し、以下のようにツイートしています。
なお、「戸辺チャンネル」の動画「振り飛車党あるある【ゲスト 山本博志四段】」の中のテーマのひとつ「どうしても飛車が振れないときはイライラする」にて、初手▲6八玉や初手から▲7六歩△3四歩▲6八玉の進行についての戸辺誠七段と山本四段の息のあった掛け合いが楽しめます。
実は初手▲6八玉が最善の可能性も?
初手▲6八玉について、先日やねうらおさんが「最善手の可能性もある」としてブログ記事で解説しています。
プロ棋士が、後手に千日手に持ち込まれるのを嫌うほどに至高の領域で指し続けられるようになったら、プロ棋界は初手▲6八玉一択になっていくかもしれません。いや、ならないでしょう。
菜々河流向かい飛車を採用
黒田五段は、2021年9月に行われた第15回朝日杯将棋オープン戦、△千葉幸生七段戦で、将棋系VTuberの菜々河れいさんが布教している「菜々河流向かい飛車」(参考1図。実戦は黒田五段が先手で、この局面にはなっていません)を採用したことでも話題になりました。
持ち時間が短く初見への対応が難しいことを考慮し、朝日杯で研究をぶつけたのでしょう。結果は千葉七段の勝ちでしたが、途中は黒田五段良しの局面もあったようです。
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
黒田五段の今後の戦型選択にも注目したいと思います。
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