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王将 VS 勢いに乗る東の天才
第31期竜王戦決勝トーナメント準々決勝、▲久保利明王将 対 △増田康宏六段戦。
本局の棋譜と詳しい解説は、竜王戦中継サイトで観ることができます(2018年7月時点)。
増田六段は、決勝トーナメントの自身初戦で西の天才・藤井聡太七段を破り、続く佐藤康光九段戦でも勝利し、この舞台まで上がってきました。
対する久保王将は、竜王戦1組4位で本局が決勝トーナメントの自身初戦となります。
久保棋王、ノマ三から石田流へ
先手番となった久保王将は、3手目▲7八飛。
後手・増田六段は、角道を開けないまま△3二銀から△3一玉と左美濃に囲いました(第1図)。
このあと後手は16手目に角道を開け、先手は19手目に角道を止めてノーマル三間飛車へ。
さらに石田流へと組み替えました(第2図)。
▲6七金と上がっているのは、△8四飛の揺さぶりに対応したものですが、局後の感想で久保王将は
作戦失敗だった。先手のわりにはたいしてうまく組めていない。
とコメントしています。
増田六段、銀冠から玉頭位取りへ
第2図から少し進み、後手は銀冠に組んだあと、△3五歩〜△3四銀と進めて玉頭位取りに発展させました(第3図)。
玉頭位取りは昔からある囲いですが、最近では現れることがまれです。
しかも採用したのが、過去に▲6六角(参考図)の新趣向からの銀冠穴熊を新人王戦決勝三番勝負で披露し、銀冠穴熊の棋書「堅陣で圧勝!対振り銀冠穴熊」をリリースまでしている増田六段なので、意外に思った観戦者の方は多かったことでしょう。
ただし、増田六段は上述の棋書の中で
銀冠穴熊は(居飛車側を先手として)△5三銀型三間飛車には有効だが△4三銀型三間飛車には打開が難しく互角
と解説しており、それをふまえれば少し納得できるのではないでしょうか。
弱点を突くさばきの構想
本譜に戻って、増田六段はさらに△2三金!?と上がりました(第4図)。
確かに玉頭はさらに手厚くなりましたが、反面横からの攻めに弱くなったのは明らかです。
振り飛車側から見れば、後手の玉が今の形のうちに飛車交換を狙い、横から飛車を打って攻めるのが効果的となります。
それを具現化したのが、第4図から▲7七角!と再び角を7七に上がり、▲6五歩!と開戦するさばきの構想でした。
ハイライトは第5図。
先手の次の一手は▲6六飛!
▲5六銀や▲6六金でも一局ですが、▲6六飛も振り飛車党として覚えておきたいさばきの一手です。
△6六同角には▲同角△3三桂に▲7四歩!があります。
以下の進行については、竜王戦中継サイトや将棋連盟ライブ中継アプリなどでご覧ください。
久保王将、快勝
本譜はこのあと、実際に飛車の入手に成功した先手が、敵陣に飛車を打ち込んでからの速攻であっという間に後手を投了に追い込みました。
これで久保王将は準決勝に進出。
ベスト4はすでに出揃っており、久保王将のほかに広瀬章人八段、三浦弘行九段、深浦康市九段と、結果的にすべて順位戦A級棋士という順当な結果に。
羽生善治竜王への挑戦権をかけた戦いは、まだ続きます。
参考記事、棋書
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