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Kristallweizen、WCSC29準優勝
第28回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC28)で優勝したHefeweizen。
第29回選手権ではKristallweizenに改名して出場し、惜しくも準優勝でした。
二次予選では頭一つ抜けて1位だったことや、決勝では優勝したやねうら王とはソルコフの差だけだったことから、優勝に限りなく近い準優勝だったと言えるでしょう。
将棋倶楽部24でレーティング4000点越え
Hefeweizenは去年から将棋倶楽部24に参戦していますが、WCSC29後も同じ名前で参戦を続けています。
中身はKristallweizenになっており、千田翔太七段の振り飛車定跡が搭載されています。
そして、特例措置により一気にレーティングが1000点プラスされ、前人未到(前コンピュータ未到)の4000点台に到達しました(JKishi18gou(人造棋士18号)にも同様の措置がとられました)。
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後手番石田流
レーティング4000点台になったHefeweizenと、七段(2800点台)の方の一局を紹介します。
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩
▲2六歩 △3五歩
▲6八玉 △3二飛(第1図)
先手側の形は違いますが、6手目△3二飛は先日行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦一次予選(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)、▲都成竜馬五段 対 △里見香奈女流五冠戦でも現れました。水面下の研究で、角交換から▲6五角と打たれても互角に戦えるという研究成果が得られているのでしょう。
第1図以下、▲4八銀に対し△4二金(第2図)。
前述の都成ー里見戦でも、また、記憶に新しい第32期竜王戦4組ランキング戦決勝、▲藤井聡太七段 対 △菅井竜也七段戦の千日手局でも、△3五歩+△3二飛+△4二金型が現れました。
この後手番石田流の布陣が、とりわけ後手番で苦しめられている現在の振り飛車党にとって活路を見いだせるかもしれないテーマ局面となっているのかもしれません。
これらプロ公式戦2局ではこのあと△3三金!〜△3四金と上がり、それぞれ阪田流向かい飛車と菅井流三間飛車のような布陣になりました(都成ー里見戦は里見女流五冠の勝利!)。
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一方Hefeweizenの本譜は、これら構想とは異なる方向に進みました。
第2図以下の指し手
▲7八玉 △6二玉
▲4六歩 △4四歩
▲4七銀 △7二銀
▲2五歩 △3四飛(第3図)
角道を止めて石田流へ。
このあとさらに駒組みは進み、先手銀冠+▲5六銀型VS後手石田流+△4三銀+△5三角型の戦いとなりました(第4図)。
後手左金は一度4二に行った金を5二に移動しているので手損していますが、Hefeweizenはこの△4三銀+△5三角型の石田流を高評価しているようです。
Hefeweizen、仕掛ける
第4図の1手前に△5三角型を完成させていたHefeweizenは、ここで△3六歩と仕掛けました。
第4図以下の指し手
△3六歩
▲同 飛 △同 飛
▲同 歩 △2七飛
▲2一飛 △2九飛成
▲1一飛成 △2五桂
▲4五歩 △1九竜
▲8五歩 (第5図)
△3六歩に対し▲3六同歩には、△4五歩▲2七飛(角による飛車取りを避ける)のところで△3六飛だと▲3七飛と飛車交換をせまられ後手不利になりますが、じっと△4六歩が好手(参考1図)。
先手から仕掛ける手段がありません。
以下▲9八香のような手にはさらに△4四銀と桂馬にひもを付けながら力をためて後手良しです。相手の手に応じ△5五歩、△4七歩成、△3六飛、△3八歩など様々な切り返しがあります。
本譜に戻って、第5図は手掛かりのない茫洋とした局面です。
このような局面からの指し回しに、棋力が現れます。
桂得かつ左桂がさばけており、コンピュータ将棋は後手良しと評価している局面ですが、お互い玉が堅くまだまだ長い戦いが続きそう、と思いきや・・・
第5図以下の指し手
△4九竜
▲4一竜 △3一歩!
▲4四歩 △3二銀
▲4三歩成 △同金
▲4四歩 △同金(第6図)
竜の捕獲
Hefeweizenの次の一手は、4筋を強化すべくじっと△4九竜でした。
これに対し同じく4筋を強化しておく▲4一竜は自然な一手のようですが、これが手拍子の悪手だったかもしれません。△3一歩で、なんと竜が捕まっています。後手の低い布陣が活きた格好です。
第6図以下▲6一竜△同銀で先手投了。人間相手なら先手の方も指し続けたかもしれませんが、コンピュータ将棋相手では戦意喪失してもやむを得ないでしょう。
これぞレーティング4000点の貫禄。一瞬の隙も逃さない切れ味です。
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