(参照サイト:将棋倶楽部24)
WCSC29でKristallweizenに改名
2019年5月に行われる第29回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC29)に、Hefeweizenは「Kristallweizen」と改名して出場することになったようです。
Wikipediaによると、Hefeweizenは濾過していない白ビール、Kristallweizenは濾過した小麦ビールだそうです。
しかし将棋倶楽部24にはHefeweizenの名で振り飛車党として今でも元気に(?)参戦中。本局は2018年11月に行われた▲某七段との一戦です。
中飛車左玉VS角道オープン石田流
▲中飛車左玉 対 △角道オープン石田流の第1図。後手がHefeweizenです。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一 | ・v王v銀 ・ ・v銀 ・v角 ・|二 | ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・|三 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 飛 ・ ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・|七 | ・ 角 王 銀 ・ 銀 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=22 △7二銀まで
▲6八銀と上がっているので左穴熊はありません。先手の七段の方はどのように駒組みを進めるでしょうか。
第1図以下の指し手
▲7九金 △3二金
▲5七銀右 △6四歩
▲4六銀 △3三桂(第2図)
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・ ・v銀v金v角 ・|二 | ・v歩v歩 ・v歩v歩v桂v歩 ・|三 |v歩 ・ ・v歩 ・ ・v飛 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 飛 銀 ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・|七 | ・ 角 王 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 金 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=28 △3三桂まで
elmo囲いに
▲7九金と寄り、今流行りのelmo囲いに構えました。

対するHefeweizenは、対左穴熊でなければ自玉はそこまで堅く囲う必要は無いと考えたかどうかはわかりませんが、△3二金とバランス重視の布陣を採用。
実はこの中飛車elmo囲いVS角道オープン石田流△3二金型は、2018年11月に発売されたばかりの「自由自在!中飛車の新常識」(今泉健司四段 著)に主要テーマのひとつとして掲載されており、超最新形と言えます。
そんな戦型をHefeweizenがしっかり採用しているのが面白いところです。
意表の居飛車へ
少し進んで第3図。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・v銀 ・v金 ・ ・|二 | ・v歩v歩 ・v歩 ・v桂v歩v角|三 |v歩 ・ ・v歩 ・ ・v飛 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 歩v歩v歩 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 歩 ・ ・|七 | ・ 角 王 銀 ・ ・ 金 飛 ・|八 | 香 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=39 ▲5七銀引まで
先手は▲5八飛〜▲2八飛と居飛車に振り直すという意表の動きを見せました。これは上述の棋書では解説されていません。こんな指し方もあるのかと参考になります。
対する後手は、その間に対中飛車左玉(左穴熊)定番の銀の繰り替え(△5一銀〜△5二銀)など、自然に駒組みを進めています。
第3図以下の指し手
△3六歩
▲2六飛 △3七歩成
▲同 金 △3八歩!
▲4八銀 △4三金
▲3六金 △4四金(第4図)
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・v銀 ・ ・ ・ ・|二 | ・v歩v歩 ・v歩 ・v桂v歩v角|三 |v歩 ・ ・v歩 ・v金v飛 ・v歩|四 | ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 金 飛 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ 角 王 銀 ・ 銀v歩 ・ ・|八 | 香 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 手数=48 △4四金まで
金対抗
先手の棒金のような指し回しに対し、後手も負けじと左金を繰り出していきます。
途中の△3八歩が機敏な垂らし。これが終盤に効いてきます。
第4図以下の指し手
▲5四歩 △同 歩
▲2四歩 △同 角
▲4四角 △同 飛
▲3五金打 △5五角
▲7七桂 △4六歩!
▲4四金 △同 角(第5図)
後手の持駒:金 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・v銀 ・ ・ ・ ・|二 | ・v歩v歩 ・ ・ ・v桂v歩 ・|三 |v歩 ・ ・v歩v歩v角 ・v角v歩|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ ・v歩 金 飛 歩|六 | ・ 歩 桂 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 王 銀 ・ 銀v歩 ・ ・|八 | 香 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 歩 手数=60 △4四同角まで
強力な二枚角
突き捨てから▲4四角〜▲3五金打が手厚い指し回しで、押さえ込まれてしまったかに見えますが、△5五角から△4六歩が玄妙な切り返し。▲同歩だと△3五角から△4六飛のさばき、▲同金だと△同角から△3五角の駒得があるので、▲4四金を催促する格好になっています。
第5図以下、3筋の歩の成り捨てや端の折衝などの末に迎えた第6図。
後手の持駒:金 歩五 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 | ・v歩v歩 ・v銀 ・v桂v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩v歩v角 ・v角v歩|四 | 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 |v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 金 ・ 歩|六 | ・ 歩 桂 歩 ・ 飛 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 王 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 ・ 金 ・ ・ ・ 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 歩 手数=71 ▲9五歩まで
本局のクライマックスです。持ち駒は金一枚。二枚角の強力なにらみを活かし、飛車の守りが加わった手付かずのelmo囲いをどう攻めるでしょうか?
第6図以下の指し手
△5七金!
▲同 銀 △7七角成!
▲同 玉 △6五桂
▲6六玉 △5七角成(第7図)
後手の持駒:銀 歩五 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一 | ・v王v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|二 | ・v歩v歩 ・v銀 ・v桂v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・ ・v歩|四 | 歩 ・ ・v桂 ・ ・ ・ ・ ・|五 |v歩 ・ 歩 王 ・ ・ 金 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩v馬 飛 ・ ・ ・|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 ・ 金 ・ ・ ・ 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 角 金 歩 手数=78 △5七角成まで
いきなり△5七金
4七の飛車を相手にしない寄せかと思いきや、その真逆。利きが足りない5七に金を放り込みます。
指されてみれば納得で、▲5七同銀と取らせてから△7七角成とすれば、▲同玉の一手に△6五桂打でelmo囲いは崩壊。評価値は1000点を軽く超えています。
先に△7七角成では▲同銀と取られ、以下△5七金には飛車を逃げられ空振りするところでした。当たりが強いからこそ手抜けないのが、先に△5七金打の意図なのです。なお、▲2七飛などと逃げる手には△6八金▲同金△8八銀!で寄っています。
上から攻めるのが急所
本局では、elmo囲いに対し一段目の金を相手にせず、手薄い三段目、しかも中央を争点とするのが急所でした。
とはいえ先手に2枚の角と金を渡してしまっており反撃が怖いですが、自玉は美濃囲いの鉄壁で詰めろがかからない形。以下数手で後手・Hefeweizenの勝ちとなりました。
プロ級と言える七段を一気に切り捨てる終盤力。文字通り人間離れしています。
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