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居飛車穴熊VSトマホーク
(参照サイト:将棋倶楽部24)
2018年11月、▲某四段対△Hefeweizen戦より。5筋不突き居飛車穴熊VSトマホークの戦いです(第1図)。
先手が▲1六歩を突いており、よくある定跡形よりも1手分後手の美濃囲いの手が進んでいます。具体的には、後手は△7二銀も△5二金左も指せています。
第1図以下の指し手
▲8六歩 △8四歩
▲7八金 △8五歩
▲7五歩 △4二飛
▲6八金 △8三銀
▲8七銀 △8四銀(第2図)
ダブル(2枚銀)トマホーク
桂跳ねを防ぐ▲8六歩に対し△8四歩として△8五歩▲同歩△同桂を狙うのは、「三間飛車新時代」(小倉久史七段と山本博志四段の共著)や「トマホーク解体新書」(タップダイスさん著)などにも載っている定番の構想。さらに△4二飛振り直し+右銀を繰り出していく構想は、三間飛車新時代のほうに載っています。なお、「ダブルトマホーク」というのは今勝手に作った新戦法名です。
△4二飛は、のちの飛車の活用をにらんだ深謀遠慮の一手。これが後で効いてきます。
第2図以下の指し手
▲6六歩 △8六歩
▲同 角 △4五歩
▲7七角 △5四銀(第3図)
角筋を活かした攻め
▲6六歩と突いて後手の左銀を追い返しにかかりますが、△8六歩▲同角△4五歩で、角筋が通ったので▲6五歩と取れません。▲7七角と引いたことで、ほぼ手得で△4五歩が入った計算になりました。
ここでHefeweizenは落ち着いて△5四銀。コンピュータ将棋ソフトでも引くことがあるのか、トマホークでも攻め続けなくてもいいのか、となんだか安心します。
さて、いったん落ち着いた第3図での先手の方針はいかに。
第3図以下の指し手
▲2四歩 △同 歩
▲6五歩 △7七角成
▲同 桂 △3三角(第4図)
急所の角のライン
先手の方針は反撃でした。2筋の突き捨てから▲6五歩。角交換になれば飛車先突破や▲8二角打の隙があるので確実な攻撃が期待できます。しかし、結果的には死期を早めたかもしれません。トマホークの第2陣が強烈でした。
角交換後すぐに△3三角打。対抗形で居飛車/振り飛車問わず、角交換後すぐに角を手放すことを気にしないのが近年の指し方です。それほどこの角のラインが急所ということでしょう。
第4図以下の指し手
▲8二角 △4六歩
▲同 歩 △8五桂
▲8六歩 △7五銀
▲9一角成 △7七桂成
▲同金寄 △8五桂!(第5図)
△8五桂連発
先手は狙いの一つである▲8二角を実現しましたが、Hefeweizenはここから再度攻撃に出ます。
まず△4六歩。序盤で△4二飛と回っていた効果(次に△4七歩成がある)で、先手はこれを手抜けません。▲4六同歩で先手の飛車の横利きが止まり、守備力が弱体化しました。
続いて△8五桂から単に桂を成らず△7五銀といったん力をためます。△8六歩のたたきが狙いです。そして▲9一角成に対し△7七桂成▲同金寄△8五桂打!と強引に△8六歩を狙いにいきます。
第5図以下の指し手
▲8五同歩 △8六歩
▲7四歩 △5一玉!
▲8八玉 △6五銀(第6図)
冷静な受けと手厚い攻め
▲8五同歩△8六歩でHefeweizenの狙いが実現しました。
先手も▲7四歩(詰めろ)と反撃に出ますが、ここで△5一玉!が冷静な受け。振り飛車から見て左辺が安泰のため、いっぺんに玉が広くなりました。また、▲7三馬(▲7三歩成)と取ってくれれば後手は7筋に歩が打てるようになり、攻めやすくなります。
先手は▲8八玉と顔面受け(あわよくば右辺への逃走)で耐えようとしますが、△6五銀と出て前線に2枚の銀が並び、後手の攻めは絶対に切れなくなりました。以下十数手でHefeweizenの勝利。
軽い端攻めではなく7、8筋からの執拗な攻め。二枚銀が手厚いダブルトマホークならではと言えるでしょう。
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小倉 久史 (著), 山本 博志 (著) 発売日:2017/10/17
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