相振り飛車の革命児・杉本昌隆八段の新著
2019年9月に、角交換するタイプの相振り飛車の棋書「角交換相振り飛車 徹底ガイド」が発売されることがわかりました。
著者は、「相振り革命」シリーズなどの相振り飛車の棋書でおなじみの杉本昌隆八段です。最近では、杉本八段が順位戦C級1組で昇級した一方、弟子の藤井聡太七段が頭ハネで昇級を逃したことでも話題を集めました。
角交換型の相振り飛車の棋書
はじめに述べた通り、今回の相振り飛車本の特徴は、全編角交換型をテーマにしているという点です。
杉本八段の過去の相振り飛車本は、相中飛車がテーマの「これが決定版!相中飛車徹底ガイド」を除きすべて所有していますが、角交換型を主テーマとして扱った棋書としては「杉本流相振りのセンス」がありました。
この棋書が発売されたのは2013年。今読み返してみると、内容が古くて今では通用しない・・・と思いきや実は今でも十分通用します。将棋ペンクラブ大賞受賞作であることからも、この棋書が名著であることがわかります。
それでは今度発売する「角交換相振り飛車 徹底ガイド」は必要ないのではないか、と感じてしまいそうですが、違います。
相振り飛車は、従来の形が指され続けつつも、さらに多様化している分野です。新たに加わった角交換相振り飛車の戦術が、本書で解説されています。そしてそれら戦術は、三間飛車党にとって非常に重要なものになっています。
初手▲7八飛からの相振り飛車など
本書のオビには、以下のように書かれています。
初手▲7八飛、3手目▲7五歩、角道オープン四間飛車、中飛車左穴熊からの角交換相振りに完全対応!
初手▲7八飛からの角交換相振り飛車。これが三間飛車党にとって重要な戦術の1つです。そして3手目▲7五歩からの角交換相振り飛車も言わずもがなでしょう。
角道オープン四間飛車からの角交換相振り飛車も三間飛車党にとって重要です。本書の表紙(参考1図)がまさにそれで、表紙の局面は、先手の角道オープン四間飛車に対し後手が石田流三間飛車で対抗し、その後先手から角交換を仕掛けた局面です。
おそらくこの戦型が解説されるのでしょう。
なお中飛車左穴熊からの角交換相振り飛車だけはピンときていません。
中飛車左穴熊は▲5五歩(後手番の場合△5五歩)を防波堤にして角交換からの開戦を防ぎながら左穴熊に囲い切り、戦いはそれから、という戦術なので、基本的には角交換相振り飛車にはならないというのが私の認識です。
一体どんな戦型なのか、楽しみに待ちたいと思います。中飛車左穴熊は対三間飛車戦術として最も有名なので、こちらも三間飛車が絡んでくるのではないでしょうか。
角換わり腰掛け銀新型同型の構想が流入
さらには、囲いと陣形についても新たな構想が解説されています。内容紹介から一部引用します。
相居飛車の▲4八金・2九飛の形の優秀性が相振り飛車にも持ち込まれて▲6八金・8九飛型が現在の最先端になっている、という話などは非常に興味深いところです。
ここ数年のプロ棋戦を観ている方々にはおなじみの、「角換わり腰掛け銀新型同型」(参考2図)。
囲いは▲6八玉(△4二玉)型とほどほどにし、▲4八金+▲2九飛型(△6二金+△8一飛型)の形に構えるのが特徴です。
この構想が相振り飛車にも▲6八金+▲8九飛型として流入してきています。例えば2019年5月に行われた第12期マイナビ女子オープン五番勝負第3局、▲里見香奈女流四冠 対 △西山朋佳女王戦(参考3図。肩書は当時)などが一例です。
先手・後手ともに▲6八金+▲8九飛型(△4二金+△2一飛型)に構えています。
本書は、相振り飛車戦におけるこの新型構想を解説する初の戦術書なのではないでしょうか。
最先端の相振り飛車を指したい振り飛車党へ
もともと金無双が圧倒的だった相振り飛車で美濃囲いや矢倉が増えたり、相居飛車や対抗系で左美濃が増えたりと、相居飛車と相振り飛車の戦術のボーダーレス化が進んでいますが、相振り飛車における▲6八金+▲8九飛型(△4二金+△2一飛型)の登場でその傾向がより強まったと言えるでしょう。
最先端の相振り飛車を指したい振り飛車党、特に三間飛車党が読むべき「角交換相振り飛車 徹底ガイド」。発売が楽しみです。
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