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金銀による押さえ込み作戦
「棒金」とは、主に石田流三間飛車対策で用いられる、金銀による押さえ込み作戦です(第1図)。
数ある振り飛車戦法の中で石田流は、浮き飛車にして金銀よりも前線に飛車を配置する、特殊な作戦です。ならばその飛車を狙って金銀を盛り上げて押さえ込んでしまおう、というのが棒金の狙いとなります。
石田流側が無策でいると、相手の術中にはまって押さえ込まれてしまい、最悪の場合飛車を取られてしまいます(参考1図)。
急戦棒金と二枚銀棒金
定跡書でよく紹介されている棒金戦法は、玉の囲いを最小限にとどめ(5三の地点を守るために△4二銀は必要な一手とされています)、早々に△8三金と上がって棒金を明示します(第2図)。
一方で、右金の動きを保留して△7二金型(または△6一金型)で駒組みを進めてくることもあり、この場合最終的に「二枚銀」まで組み上げてから△8三金とする、「二枚銀棒金」が有名です(第3図)。
左銀も5三まで移動しているので、押さえ込み力が半端ない布陣です。石田流側はうまくさばかないと、完全に押さえ込まれて手も足も出なくなります。
なお、このようにやや緩やかな急戦を「亜急戦」や「準急戦」などと呼びます(玉の囲いに手をかけていないので、持久戦とは趣が異なります)。
棒金の弱点と棒金対策
棒金の弱点は、居飛車から見て右辺の金銀が玉から離れてしまうため、玉が薄いという点です。
石田流側の対策としては、早めに美濃囲いに囲って玉の堅さを活かし、多少の駒損を覚悟で飛車角銀桂をさばいていくのが基本方針となります。
急戦棒金対策
急戦棒金に対しては、8三に金を上がられたタイミングで飛車を7八に引いて、△7四歩と仕掛けられた瞬間に▲6五歩と突くのが有名な手筋です(第4図)。
これは左銀が7九にいるからこそできるカウンターで、△8八角成に▲同銀と取ることができます。
左銀の移動を保留することは、このカウンターができることと、美濃囲いにすばやく囲い切れることの一石二鳥の価値があります。
亜急戦棒金対策
一方で居飛車が仕掛けを保留した場合、石田流側は▲7七桂、▲9七角、▲6八銀〜▲6七銀〜▲5六銀を適切な順番で指し進めていく必要があります。相手がどのタイミングで△8三金と上がって仕掛けてきても対応できる駒組みをしなくてはなりません。
相手が仕掛けを保留し続けて二枚銀棒金の布陣にまで発展した場合、石田流側は第5図のように石田流本組みにまで組み上がっています(高美濃囲いにしなければ)。
飛車を引いて押さえ込みをいなしたり角交換をせまったりするさばきをみせられないので、▲6五歩〜▲6四歩、▲8五桂〜▲7三歩、▲4五銀などの手筋を駆使して金銀の包囲網をくぐり抜ける必要があります。
この辺りの戦い方は、戸辺誠七段執筆の「石田流の基本―本組みと7七角型」と石田流を指しこなす本【急戦編】に非常に詳しく載っています。
「石田流を指しこなす本【急戦編】」の方が新しく、次の一手形式で石田流のさばきの手筋やコツを身に付けることができるのでオススメです。
参考:袖飛車戦法
なお、棒金戦法に少し似た居飛車急戦定跡として「袖飛車戦法」(参考2図)があります。
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石田流の基礎知識 袖飛車とは
「袖飛車」とは、飛車を居飛車の位置から1つ寄って戦う戦術です。第1図は先手石田流三間飛車VS後手袖飛車の例ですが、石田流に限らずどんな振り飛車が相手でも、または相居飛車戦でも、飛車を1つ寄った形は袖飛車と呼ばれます。
抑え込みVSさばき
金銀による抑え込みの圧力が凄まじい棒金戦法。
石田流側としては、対棒金特有のさばきの手筋やコツを身に付けておき、対応できるようにしておくと良いでしょう。
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【2021年1月更新】石田流の基礎知識、定跡まとめ
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