山崎隆之八段、パックマンを採用
2020年3月23日に行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント、▲山崎隆之八段 対 △久保利明九段戦。
本局の棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
振り飛車党との対局ではとりわけ独創的な序盤戦術を見せる山崎八段。
将棋連盟ライブ中継アプリでの対局中継で、山崎八段はここ最近4局連続で振り飛車党と対戦しており(2月26日の戸辺誠七段戦、2月29日の佐藤和俊七段戦、3月23日の久保九段戦、そして3月26日の西田拓也四段戦)、いずれも衝撃的な序盤戦術を披露しています。
振り飛車が相手ならば、どんな序盤戦術でも一局、そして力戦のほうが自身の力を発揮しやすい、という思想があるのかもしれません。
この4局の中でとりわけ衝撃的だったのが、本記事のタイトルに書いた▲山崎八段 対 △久保九段戦で、なんと山崎八段は奇襲戦法「パックマン」を採用しました。プロの公式戦でパックマンを見たのは、私はこれが初めてかもしれません。度肝を抜かれました。
しかし久保九段は山崎八段の挑発に乗ることなく6六の歩を取らず、ノーマル三間飛車を採用。
これでやや力戦系の居飛車VS振り飛車に、と言いたいところですが、ここからも「やや」どころではすまない山崎八段の天真爛漫な序盤構想が続きました。
そして結果は、山崎八段の勝利。言葉がありません。
パックマン戦法とは
パックマンについて簡単に説明しておきます。
「パックマン」とは、基本的に後手が用いる奇襲戦法で、先手の初手▲7六歩に対し2手目△4四歩?!と突きます(参考1図。なお▲山崎八段 対 △久保九段戦では初手から数手の駆け引きの末山崎八段が先手番で採用しました)。
▲4四同角とタダで取れるため、知らない人が見たら突く歩を間違えたのではないか、と思うかもしれません。
しかし実際に▲4四同角と取ると、△4二飛?!が飛んできます。そして自然な▲5三角成に対し△3四歩(参考2図)。
以下歩損のうえ飛車2枚VS角2枚の戦いになりますが、自分の土俵に引きずり込んで十分に戦える、というのがパックマン側の主張です。
参考2図以下の戦いや、戻って▲5三角成としなかった場合、さらに戻って▲4四同角と取らなかった場合など、変化は多岐に渡りますが、ここでの紹介は割愛します。
パックマンの解説書
パックマン戦法を解説する棋書としては「奇襲大全」や「これで万全!奇襲破り事典」などがありますが、ハメ手の狙いとその対策の両方を簡潔に学べる後者の方が個人的にはオススメです。
「これで万全!奇襲破り事典」をオススメする理由は、鬼殺しや新鬼殺し、早石田、久保流急戦(久保新手▲7五飛)など、三間飛車党、とりわけ石田流党注目の奇襲戦法の解説の分量が多いからです。
藤井聡太七段の最年少タイトル挑戦なるか
山崎八段がベスト8に進出した第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメントですが、決勝トーナメントは大詰めを迎えつつあり、別の山では藤井聡太七段がすでに準決勝に駒を進めています。
藤井七段は、この棋聖戦にタイトル挑戦の最年少記録更新の可能性を残しています。今後の決勝トーナメントの行方にも注目です。
4月12日追記:山崎八段、NHK杯戦でもパックマン採用
山崎八段は、2020年4月12日に放送されたNHK杯将棋トーナメント、▲西川和宏六段戦でも、先手・西川六段の三間飛車に対しパックマンを採用しました。
しかもこちらも見事勝利。まさに「魅せて勝つ」棋士の代表格です。
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