永瀬拓矢二冠VS久保利明九段
2020年2月19日に行われた第33期竜王戦1組ランキング戦、▲永瀬拓矢二冠(叡王、王座) 対 △久保利明九段戦。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
竜王戦1組のベスト4をかけた大きな一局です。1組は3位までに入れば決勝トーナメントに進出できます(3位決定戦は準決勝の敗者同士の対局)。
居飛穴VS四間飛車への振り直し作戦
数年前に居飛車党に転向し、昨年(2019年)叡王、王座のタイトルを獲得するなど目覚ましい活躍を見せている永瀬二冠の先手居飛車穴熊に対し、後手・久保九段はノーマル三間飛車から四間飛車への振り直し作戦を採用しました。
「四間振り直し」とは
四間振り直し作戦とは、ノーマル三間飛車の出だしから左銀を6八→5七→4六と進出したあと▲6八飛と寄る作戦です。
例えば参考1図。
ここから▲5七銀△5三銀▲4六銀△4四銀(▲4五銀を防ぐ銀対抗。△4四歩も一局ですが、居飛穴を堅くしづらくなります)と形を決めてから▲6八飛と寄ります(参考2図)。
△4四銀と上がらせたことで、
- 後手の角道が止まったため先手の角道を通しやすくなった
- 後手の6筋の受けが手薄になった
といった効果があり、このあと▲6五歩と突いて▲6四歩を狙うことができます。
居飛車が千日手で妥協する変化もあるので、三間飛車側としては基本的に後手番で採用する戦法です。本譜も久保九段が後手番で採用しています。
「三間飛車戦記」にプロの実戦譜解説あり
2019年夏に発売された棋書「三間飛車戦記 2008~2019」(小倉久史七段と山本博志四段の師弟コンビによる共著)の「第6章 先手居飛車穴熊対後手三間飛車から四間に振り直し」に、この四間振り直し作戦のプロの実戦譜が解説付きで載っています。
格言通りの手厚い指し回し
本譜は中盤、久保九段が美濃囲いに囲ったあと飛車の細かい動きで永瀬陣の右辺をけん制し続けます。その後飛車交換からと金を作り、さらに敵陣に打った飛車を自陣に引きながら成って自陣を強化しました。
「穴熊相手に単純な攻め合いは禁物」という格言を思い出させてくれる手厚い指し回しで、とても勉強になります。
強烈な端攻め
その後、あれよあれよと言う間に端に戦力を集中していく久保九段。
端以外の戦力をすべてさばき切ったあと、ためにためた戦力を一気に解放して端攻めを炸裂させ、そのまま寄せ切ってしまいました。美濃囲いは無傷です。
まさにさばきのアーティスト。間違いなく久保九段の会心譜と言えるでしょう。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改
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