この記事は、2009年4月に書いた記事に加筆修正を加えたものです。
目次
stably八段 VS yomoni-八段
(参照サイト:将棋倶楽部24)
2009年4月現在、「将棋倶楽部24」で最強の三間飛車党(レーティングが3000点を越えています)であるstably氏と、24の最高レーティング保持者であるyomoni-氏の一戦より。
第1図は後手のyomoni-氏が△1二香と香を上がり、居飛車穴熊の方針を明示したところです。
これに対し、先手側の対抗策はたくさんありますが、本局でstably氏が選んだのは▲5九角と引いて石田流を目指す構想でした。
第1図以下の指し手
▲7五歩 △1一玉
▲5九角 △6四歩
▲7六飛 △2二銀
▲7七桂 △6三銀
▲5八金左 △5二金右
▲5六銀 △2四歩
▲3六歩 (第2図)
対居飛穴▲5九角型石田流については、詳しくは「三間飛車道場〈第2巻〉居飛穴VS4三銀」や、後述の「真・石田伝説」をご参照下さい。
さて、▲4六歩や▲2六歩よりも先に▲3六歩を突くのはやや違和感があります(もっとも、昨今の力戦振り飛車の戦いではよく見かけるようになりました)が、これは▲2六角や▲3七角の含みを残した構想です。瞬間的に角頭のガードが甘いのはお互い様でしょう。
相銀冠穴熊
第2図以下、本譜は▲3七角と上がりました。この後、玉を1八に移動すれば「楠本式石田流(楠本流)」と呼ばれる構想となります(詳しくは「真・石田伝説」参照)。
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石田流の基礎知識 楠本式石田流とは
楠本式石田流とは、アマ強豪の楠本誠二氏が発案した石田流です。組み上がるまでに手数がかかるので、対居飛車穴熊専用の布陣といえるでしょう。ポイントは以下の2点。B面攻撃、端玉。ここでいう「B面攻撃」とは、角の攻撃対象のことを指しています。普通石田流の角の位置は、石田流本組みのように▲9七角型か、▲7七角型。相手の玉の方をにらむ角筋がメインとなります。しかし楠本式石田流では、飛車の方をにらみます。
しかし本譜は2八の地点で銀冠に囲った後、銀冠穴熊に移行しました(第3図)。
いよいよ先手・stably氏が仕掛けます。
第3図以下の指し手
▲6五歩 △同 歩
▲同 銀 △6四歩
▲5六銀 △7四歩
▲同 歩 △同 銀
▲7五歩 △6三銀
▲6二歩 (第4図)
穴熊にはと金攻め
先手・後手それぞれ6筋と7筋の歩を切りあった後、先手は▲6二歩と歩を垂らします。遠いように見えますが、攻め手が無いのはお互い様。「穴熊にはと金攻め」を地で行く、ボディブローのような渋い垂れ歩です。
第4図以下の指し手
△7八歩
▲6一歩成 △5三角
▲7四歩 △同 銀
▲4五銀 △6三銀
▲5一と △7九歩成
▲5六飛 (第5図)
一転、中央攻撃へ
後手も同様に△7八歩と垂らして焦土戦術をとりますが、先手のさらなる歩による攻め・▲7四歩が好手です。
△8三飛や△7二銀だと大きな利かされなので、取るしかありません。取り方も、△7四同飛では飛車交換のあと後手の右銀がそっぽ過ぎるので先手有利でしょう。そのため△7四同銀ですが、やはり銀がそっぽにいったことをとがめ、一転▲4五銀と中央から攻めます。泣く泣く△6三銀と戻りますが、▲5六飛とたたみ掛けて中央突破が受かりません。
結果は先手・stably氏の圧勝。今後も三間飛車戦法を駆使して大活躍していただきたいものです。
2019年追記:stably氏、モデルチェンジで大活躍中
stably氏とは、活躍の舞台をプロ棋界へと移し、現在大活躍しているあの棋士(との噂)です。興味のある方はネット検索してみると良いでしょう。
プロ入り当初は三間飛車党で、新人王戦で優勝するなどしていましたが、順位戦ではC級2組をなかなか抜けられず本人は苦悩していたようです。その辺りのエピソードは「永瀬流 負けない将棋」(永瀬拓矢二冠 著)のまえがきでも語られています。
その後ゴキゲン中飛車を取り入れ、さらには居飛車党に転向したことで完全に覚醒。2019年11月時点で複数のタイトル(叡王・王座)を獲得するまでになったうえ、まだまだ伸び代がありそうです。
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現在更新休止中の姉妹ブログに当時書いた記事です。
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