目次
天王山を取る
前回の第4図から、後手が△2五歩と突いてむかえた第1図。
次の一手も、▲5七銀→▲4六歩からの一連の構想です。
第5図以下の指し手
▲5五歩 (第2図)
5筋の位を取ります。一見伸びすぎで、△5四歩から位を奪回されそうですが、8八にいる角の支えがあるので大丈夫です。
ここでひとつのポイントが、先手の飛車の位置。もし▲7六飛という浮き飛車の形だと、△4五歩~△5四歩などから暴れられる可能性がありますが、▲7八飛の形だと8八の角にひもがついているので、基本的に▲同歩で問題ありません。飛車を浮いたり7筋の歩交換を決める前に、中央の好形を急いだほうがよいでしょう。
厚みのある金無双へ
さてここから玉の整備に進みます。
美濃囲いもありますが、いくつかの定跡書で取り上げられているのが、以下の玉形です。
第2図以下の指し手
△7二玉
▲4八金上 △3五歩
▲4七金左 (第3図)
▲4八金から▲4七金左、と進めます。美濃囲いよりも上部の厚みを重視した、金無双の発展形です。
続いて第3図から△6二金▲9六歩△9四歩▲1六歩△1四歩と進んで迎えた第4図。
第4図以下の指し手
▲8六歩 △2六歩
▲同 歩 △同 飛
▲2七歩 △2四飛
▲8五歩 (第5図)
後手の2筋の歩交換に対し、先手も8筋の歩を突いていきます。
第5図はいい勝負といえるでしょう。
「無敵のトライアングル」を許さない▲5七銀型
この▲5七銀型の優秀性のひとつは、「銀の支えのおかげで▲4六歩が突ける」という点です。
▲6七銀型だとこれを実行するのは難しく、逆に相手に4筋の歩を突きこされる(△4五歩の形)可能性が高くなります。すると、将棋世界での鈴木大介先生の相振り飛車講座(2003年末~2004年初めにかけて連載)で言うところの「無敵のトライアングル」(後手番に置き換えると△2四飛+△4四角+△3三桂の形)を組まれやすくなります。鈴木先生曰く、「この形さえ出来上がれば、"勝った"と思ってよいだろう」と記しているほどです。これは誇張しすぎと思いますが、優秀なことには間違いありません。
このトライアングルを安易に相手に許さないところが、▲4六歩型、ひいては▲5七銀型の強みというわけです。
伝説の島研メンバーの読み筋は
第5図と非常によく似た形が、「読みの技法」(島朗、羽生善治、佐藤康光、森内俊之 著(段位・敬称略))テーマ2図に載っています。
次回そちらを少しだけ紹介しますので、第5図からの戦い方の参考にしただけたらと思います。
次回
次回
猫だまし戦法講座 第4章・第5節 対2手目△3四歩・VS向かい飛車型 その3
「読みの技法」は、優越の判断が難しい25のテーマ局面を用いて、羽生善治・佐藤康光・森内俊之という大先生方が、そこからの読み筋・構想を披露するという形式で編集された棋書です。第1図は、本棋書のテーマ2図。前回の第5図とは先後も形も若干違いますが、構想的にはほぼ同じです。第1図の形勢をどう見るか?
2018年追記:最小限の囲いからの速攻が主流
現代将棋では、この向かい飛車の「無敵のトライアングル」を阻止する手段として、▲3九玉型美濃囲いで玉の囲いにかける手数を最小限にして速攻を仕掛ける、というのが主流となっています(参考図。菅井流三間飛車の仕掛け)。
組み上げるまでに手数がかかる、というのが無敵のトライアングルの大きな弱点です。
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