山崎八段、糸谷流右玉で杉本八段の三間飛車穴熊に勝利 棋聖戦

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VS居飛穴&持久戦

初手▲7八飛VS独創的な山崎流

2019年11月6日に行われた第91期ヒューリック杯棋聖戦二次予選、▲杉本昌隆八段 対 △山崎隆之八段戦。

本局の棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。

杉本昌隆八段は藤井聡太七段の師匠としておなじみの振り飛車党。有名な「相振り革命」シリーズをはじめ相振り飛車の棋書を数多くリリースしており、今夏には「角交換相振り飛車 徹底ガイド」をリリースしています。

本

三間党注目「角交換相振り飛車 徹底ガイド」2019年9月発売

2019年8月23日

先手番となった杉本八段は、プロ棋界でもはやおなじみとなった初手▲7八飛を採用しました。

一方の後手・山崎隆之八段は、居飛車党でありながらもその枠には収まらない独創的で魅力的な指し回しで知られています。はたして本局では、初手▲7八飛に対し2手目△1四歩、そして3手目▲7六歩に対しさらに4手目△1五歩?!と端歩を最優先に突いていきました。

この場合、振り飛車から見て左辺の駒組みで後手が立ち遅れる可能性がありますが、自由奔放な山崎将棋では気にならないのでしょう。

三間飛車穴熊VS糸谷流右玉

このあと、端歩を突き越されたことが損にならないようにすべく杉本八段は三間飛車穴熊に。穴熊ならば端歩を突き越されても気になりません(▲1六と突いてしまうと一手かけたうえ争点を与えてしまいむしろ損になりがち)。

それを見てかその前からの構想か、対する山崎八段は糸谷流右玉に組み上げました。

糸谷流右玉とは、相居飛車戦ではなく対振り飛車で玉を右玉に構える布陣で、糸谷哲郎八段が奨励会時代およびプロ棋士になりたてのころに採用していました(参考1図)。

  【参考1図は▲5八金まで】
糸谷流右玉

糸谷八段は、四~五段時代にこの戦法で好成績を残したことから「糸谷流右玉」とも呼ばれるようになりました。中飛車に限らず、向かい飛車、三間飛車、四間飛車のすべての振り飛車に対して用いていました。

▲3八玉+▲4八金と構える普通の右玉と違い、▲4八玉+▲3八金と構えているのが工夫です。場合によっては振り飛車からの3筋の攻めに対し▲2七金〜▲2六金と上がって受ける余地を残しています。

これが▲2七玉〜▲2六玉だと、あまりにも危険すぎる「顔面受け」になってしまいます。
また、今年9月には豊川孝弘七段が糸谷流右玉を解説した棋書をリリースしています。
豊川孝弘 (著) 発売日:2019/9/11

糸谷八段と山崎八段は共に森信雄七段門下。糸谷八段との練習将棋などを通して、山崎八段は糸谷流右玉の特徴や強みを熟知していることでしょう。

入玉と穴熊の姿焼き

本譜はこのあと杉本八段の攻めに対し山崎八段が入玉含みに受け続ける展開となりました。

途中難しいところもあったようですが、結果的に山崎八段が入玉に成功。負けを悟った杉本八段は自玉の三間飛車穴熊が全くの手付かずにも関わらず投了し、「穴熊の姿焼き」で山崎八段の勝ちとなりました。

勝った山崎八段の次戦の相手は西田拓也四段。西田四段も森門下で、先手番だと初手▲7八飛を多用する振り飛車党です。この一局も楽しみです。

参考:評価値グラフ

※棋譜解析エンジン / 評価関数:
 YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改

11月17日追記:山崎八段、再び糸谷流右玉採用

山崎八段は、本局の約1週間後の2019年11月14日に行われた第78期順位戦B級1組、▲山崎八段 対 △菅井竜也七段戦でも糸谷流右玉を採用しましたが、こちらは菅井七段の見事な指し回しにより終盤戦入口時点で形勢に差がつき、菅井七段の勝ちとなりました。

糸谷流右玉の弱点がうんぬんというより、菅井七段が強かったという印象です。