VS急戦の基礎知識 棒銀とは

棒銀 VS急戦&右四間

飛車と銀で飛車先突破を図る戦法

「棒銀」とは、右銀を2六に移動し、さらに右銀を進出させて飛車と銀で飛車先突破を図る居飛車戦法の1つです(代表図)。

  【代表図は9手目▲2六銀まで】
棒銀

中でも代表図は、玉の囲いを後回しにして一直線に棒銀による攻略を目指した戦術で、「原始棒銀」と呼ばれています。

棒銀戦法はわかりやすさが魅力で、将棋を始めたあと最初に覚えて採用してみた方も多いのではないでしょうか。

しかし相手が強くなってくると一筋縄ではいかず、単純な棒銀だけでは勝てなくなってきます。そのため玉を囲ってから角や左銀なども活用し、3筋や4筋(場合によっては1筋や5筋も)を絡めた攻めを仕掛けるようになるなどして、棒銀の戦術は進化していきました。一例が第1図です。

【第1図は▲2六銀まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v王v銀 ・v金 ・v飛 ・v香|二
| ・v歩v歩 ・ ・v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 銀 ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=31 ▲2六銀まで

棒銀には第1図のような対振り飛車のものと、対居飛車のものがありますが、本記事では対振り飛車の棒銀、とりわけ三間飛車VS棒銀に絞って説明します。

棒銀の成功例

第1図以下の棒銀の典型的な成功例を説明します。

第1図以下の指し手
      △1四歩
▲3五歩  △同 歩
▲同 銀  △3四歩
▲2四歩  △同 歩
▲同 銀  (第2図)

【第2図は▲2四同銀まで】
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂 ・|一
| ・v王v銀 ・v金 ・v飛 ・v香|二
| ・v歩v歩 ・ ・v銀v角 ・ ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩 銀v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二 
手数=39 ▲2四銀まで

以下、△2四同角には▲同飛、△2二飛にはうっかり▲3三銀成と角を取ってしまうと△2八飛成と飛車を取られて事件ですが▲2銀成または▲2三歩としておけば居飛車大優勢です。

第2図までの手順中、△2四同歩のところ△3五歩と銀を取られても▲2三歩成とすれば飛車か角を取り返せるのでこれも居飛車大優勢です。

棒銀対策の基本中の基本

第2図までの手順中、では振り飛車の指し手のどこがまずかったかというと、△3五同歩と取ってしまっている点です。これにより、居飛車の棒銀が▲同銀とスムーズに5段目に進出できてしまっていました。

棒銀対策の基本中の基本は

POINT
▲3五歩を△同歩と取らない
ことです。これは銀が2六からではなく4六から進出していく「斜め棒銀(ナナメ棒銀)」(参考1図)に対しても同様です。

【参考1図は▲3五歩まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v王v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 王 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=0 ▲3五歩まで

▲3四歩と取り込まれても△同銀と取り返せるので、居飛車の右銀に▲3五銀と進出されません。

多少の例外ケース(取ったほうが良いケース)はありますが、取らない方針に絞ったほうがわかりやすく読みやすいでしょう。

この場合、右銀を5段目に進出させるために居飛車は▲3八飛と寄って援軍を送ることになります(参考2図。第1図から△1四歩▲3五歩△5一角▲3八飛とした局面)。

【参考2図は▲3八飛まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v角 ・ ・v桂 ・|一
| ・v王v銀 ・v金 ・v飛 ・v香|二
| ・v歩v歩 ・ ・v銀 ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 銀 ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=35 ▲3八飛まで

つまり

POINT
争点は2筋ではなく3筋
ということです。

ここで三間飛車が活きてきます。すなわちすでに飛車が3筋にいるので、争点が3筋に変わるのは大歓迎なのです。

以下の攻防については多岐に渡るので、説明は割愛します。三間飛車ではなく、四間飛車の定跡書を読んで勉強すると良いでしょう。三間飛車の定跡書には棒銀対策は基本的に載っていません。

棒銀に強い三間飛車

三間飛車目線で棒銀を見ると、実はあまり注視すべき戦法ではありません。

上述の通り、振り飛車VS居飛車棒銀の戦いは争点が3筋になります。四間飛車や向かい飛車で棒銀を迎え撃つときでも、3筋に飛車を振り直すのが一般的です。

三間飛車はもともと飛車が3筋にいるので、四間飛車に比べて4二から△3二飛と飛車を寄る一手分得できることになります。先手四間飛車VS後手棒銀が、後手三間飛車VS先手棒銀と同等ということです。したがって、三間飛車は四間飛車よりも有利に棒銀に立ち向かうことができます。

裏を返すと、居飛車党が「三間飛車に対する棒銀は損」という認識があるので、棒銀を使ってきません。平成以降の三間飛車対策の棋書にも「加藤流 最強三間飛車撃破」を除き棒銀は載っていません(私調べ)。

実はむしろこちらのほうが重要で、三間飛車党から見れば棒銀対策を考えないで済むといううれしい面があります。

三間飛車党は棒銀に弱い?!

三間飛車党は四間飛車党に比べて間違いなく棒銀定跡に詳しくないでしょう。

もしそこを居飛車党に狙い撃たれたら?

実際に棒銀をやられたら、ラッキーと思うような三間飛車党は少数で、「四間飛車で迎え撃つよりは楽らしいから、定跡を知らないけど筋っぽく指してみればなんとかなるだろう」と考える方が大多数ではないでしょうか。

ですので、棒銀を研究し尽くした居飛車党と対峙したら、三間飛車党は太刀打ちできるかどうか・・・

これを毒饅頭と考えるかどうかは、居飛車党の方々にお任せします。

加藤一二三九段の棒銀

棒銀を得意とするプロ棋士といえば、なんといっても加藤一二三九段でしょう。

「加藤棒銀」と呼ばれるほど棒銀戦法の採用率が高いことが有名で、四間飛車に対して居飛車穴熊が流行してもなお、棒銀で挑み続けている。また、相居飛車の一つである角換わりの将棋においても、棒銀を採用する傾向にある(一般的には棒銀よりも腰掛け銀を採用する棋士が多い)。

自身の著書「加藤流 最強三間飛車撃破」でも、上述の通り対三間飛車では得ではないにも関わらず、代名詞の棒銀戦法を解説しています。棒銀の章の冒頭で

振り飛車は、先手四間飛車の戦いをしていることになるが、居飛車側が棒銀が得意な人であれば、十分戦えるので、この章を解説する事にした。

と述べているのが滑稽です。得意になりたいから棋書を読むのだと思います(笑)。

わかりやすくも奥が深い棒銀戦法

私自身は今となっては最初に覚えた戦法が何だったか覚えていませんが、将棋入門者の方に将棋の戦法を教えるとしたら、真っ先に棒銀を教えます。狙いがわかりやすいため、教える方も覚える方も楽だと思うからです。

実際、自分の娘には棒銀から教えました。

「どうぶつしょうぎ」や「ハローキティ はじめてのしょうぎセット」などいろいろ買い与えたものの、将棋を趣味にさせるのには完全に失敗し、「棒銀から教えた」というより「棒銀だけ教えて終わった」と言ったほうが適切かもしれませんが・・・(涙)。

自玉を見ないで戦える居飛車穴熊と違い、攻めと受けの両方を考えながら戦う将棋の基礎の要素をしっかりと学ぶができるので、将棋を覚えたてのころは持久戦より急戦定跡を指したほうが良いとも言われています。

それでいながら、実は非常に奥が深い棒銀戦法。プロ棋界で指されないからダメな戦法、というわけではありません。壁にぶつかるまでは棒銀で突き進むのが将棋上達への道の1つです。

対する三間飛車党は、対棒銀の手筋を覚えておき、ごくまれに発生する対棒銀戦を華麗にいなせるようにしておく準備が最低限必要です。

関連棋書

加藤 一二三 (著) 発売日:2004/06

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